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それをどこに置いてきたっけ
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は? 目ん玉飛び出しそうなくらい目を見開いて俺を凝視した男はそれだけを口にして停止した。 その間にすたこら逃げようとしたが、あっさり捕まえられて本日三度目のベッドイン。
俺のことを覚えていないのかと問いつめられるがいくら聞かれても知らないものは知らない。そう答えれば男は俺から少し離れて何かを考えこんでいた。
今なら逃げられるかも、と少し思ったがまた捕まえられるだろうし逃げきれても行くところがない。なにしろ自分の名前さえもわからないのだから。
とにかくこの好きになれそうにない男に自分の素姓を聞いてからこれからのことを考えよう。実はどこぞの国の王子でした、なんてことになってたら面白いのに。いや、でもそれはないか。こんな平凡顔で。…自分で言ってて悲しくなってきた。
そんなことを思っていると、考えがまとまったらしい男が振り向きざまに俺を抱きしめてきた。…何故だ。
男が言うには俺の名前は山田次郎で歳は16。王子でも何でもないただの高校生らしい。驚いたのは俺は全寮制の男子校に通っていて、同じ学校で生徒会長を務めているこの男の恋人であるということだ。しかも俺から告白したらしい。俺はこいつのどこに惚れたんだろう。少なくとも今は全く好きになる要素はないぞ。顔がいいだけで。
俺が今いるところはこいつの寝室で今日は土曜日だから学校はないらしい。 月曜日だったら大変だった。何も知らずに知らないところへ登校しなければいけないのだから。友達の名前も覚えていないのに。俺だったらある日突然友達にお前誰?って言われたら相当ショックだ。自称恋人なこいつには言ったが。
しかしそれは杞憂らしい。なんでも俺は全校生徒から嫌われているそうなのだ。でも俺は味方だよ、と苦しそうに言ってくるこいつはどうも信用ならないが、痣だらけの自分の体から嫌われているのは本当なのだろうと悟った。
それにしても何故俺はこんな状況にあるのだろう。 美形な生徒会長と平凡すぎる俺、告白が俺からだというのは納得だがOKされたというのがわからない。 鏡の前での言い様からしてこいつは俺のことが好きではないだろう。
それに全校生徒に嫌われるというのはただ事ではない。こんな地味な男、一度見たくらいじゃすぐに忘れてしまうだろう。それほどのことをしたのだろうか。
必死に状況を把握しようとしていると、会長が抱きしめる力を強くしてきた。
次郎、次郎と愛おしそうに呼ぶ声に胡散臭さを感じたが、また殴られると困るので何も言わずにじっとしていた。
満足したのか俺を解放した会長は朝食を作ると言って寝室を出た。生徒会役員の部屋は二人部屋を改装して一人部屋にしたもので、とても広い。とりあえず俺も顔を洗おうと思い、寝室を出た。
人生でまずお目にかかれることなんてないだろうあの美形な男に、しかし俺は良い感情を抱けなかった。
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