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忘れものを忘れたんだ
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とにかくこいつは本当のことを喋りそうにないので他のやつに聞こうと部屋を出る算段を立ててみたものの、口では説き伏せられそうにないので隙をつくって逃げることにした。
方法は簡単。とりあえず俺から抱きついてみる。しかしさらに抱きしめる力が強くなってしまったため、本当はやりたくなかったが、会長にキスしてやった。予想通りというか何というか、固まってしまった会長を突き飛ばして部屋を出た。
…そのとき会長がどんな顔をしているかも知らないで。
部屋を出るとちょうど良く黒髪のいかにも優等生な感じの生徒に鉢あった。ちなみに美形。向こうは俺を見た途端に顔をしかめたがこっちとしては好都合。会長に捕まる前に逃げなければ。
でっかく風紀と書かれた腕章をつけているその男に自分の状況を簡単に説明すれば、訝しみながらも風紀室に連れていかれた。
風紀室で俺は第一に、会長と俺が本当に恋人同士であるのかを確認した。そうであってほしくない、会長の妄想であることを祈りながら聞いた俺に風紀委員長であったその男はあっさりと肯定してしまった。
がっくりとうなだれる俺に追い打ちをかけるように、先ほど会長に聞いた話と全く同じことを聞かされた。つまり会長は本当のことを言っていた訳である。
会長には俺から告白し、全校生徒には嫌われ、ついでに目の前の風紀委員長も俺のことが嫌いらしい。
だがそこで、会長からは聞かされなかった事実を知った。 やはり会長は俺のことは好きでもなんでもなかったのだ。というのも数ヶ月前に転入生なるものが来てそいつがもう本当に可愛くて会長も風紀委員長もその他人気者どもの心も全てかっさらっていったらしい。
転入生を振り向かせようとみんながチヤホヤする中、会長は頭がいいのか性格が悪いのか、ちょうどそのとき告白してきた俺を恋人にすることで転入生の気をひこうとしたのだ。
会長の目論見通り、転入生は会長のことが気になり好きになった。…なんて単純なヤツなんだ。
俺のことが邪魔になった転入生は俺につきまとい俺の悪いところを大声で叫び、挙げ句の果てには俺にいじめられているなんて言い出したというのだ。
制裁という名の大義名分を得た転入生信者は親衛隊を使って俺に暴力をふるい、会長は転入生の前で俺を甘やかすことで転入生の嫉妬を煽りさらに制裁がキツくなる……とそこまで言われたところで思った。俺、悪くないんじゃね?
目の前の風紀委員長も思ったのだろう、頭を抱えて唸っている。
それにしても悲しすぎるな、俺。利用されて嫌われて、形だけといっても恋人に暴力までふるわれてたんだから。
このまま転校してしまおうか、そう思って風紀委員長に向きなおれば相手もこちらを真っ直ぐに見つめていた。今さら回りくどくするのも面倒なのではっきり転校しますと言おうとしたが、その前に頭を下げられた。 すまなかった、そう言って頭を上げない風紀委員長は心なしか震えているようだ。こんな姿の風紀委員長は珍しいらしく、周りで空気と化していた風紀委員たちが戸惑っている。ここで俺が追い打ちをかけるのは忍びないのでとりあえず頭を上げてもらおうとしたそのとき、風紀室の扉が勢いよく開けられた。
よく見知ったその男は俺を見てほっと息をついた。
それにしても、どうしてこの男は部屋で俺にあんな甘い態度をとったのだろう。見せつける転入生もいないのに。どうして俺は、この最低な男を好きだったのだろう。
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