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聞かせてくれる?君のはなし
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いきなり風紀室に入ってきた会長はまっすぐ俺に向かってきて、俺を抱きしめた。 風紀室の時が止まった。風紀委員長も風紀委員もみんな、目を見開いて硬直している。会長が俺の肩に顔をうずめて名前を繰り返し呼んでいる姿など、見たことがなかったのだろう。それにしても力が強い。絶対に逃がさないとでもいうように締めつけられて身体が痛い。身じろげばその分強くされるので飽きるのを待っていると、復活したらしい風紀委員長が会長を引き離そうとしてきた。
会長は簡単には離れようとはしなかったが、風紀委員総出で引き離しにかかられれば流石に離れることができた。と同時に何故か今度は風紀委員長に抱きしめられた。
射殺さんばかりに睨んでくる会長に対して風紀委員長はなんと、こいつは俺がもらう、なんてのたまった。
なんなんだこの状況。美形二人で平凡を奪い合うとかおかしいことこの上ないだろう。というか二人共転入生が好きなんじゃないのか。ここに転入生がいるのか。そんな俺の思いが具現化したのか、転入生が風紀室に入ってきた。ちなみに何故入ってきたのが転入生だとわかったのかというと、そいつが俺を見た瞬間に次郎…!と言って怯え出したからである。
まさかの四角関係の完成に何も言えないでいると、転入生は未だに俺を抱きしめている風紀委員長に向かって叫び出した。どうして俺をいじめる次郎を抱きしめているのか、と。やはりこいつは転入生らしい。
こうして転入生がいる以上、二人は俺を取り合うだろう。転入生の気をひくために。
風紀委員長は予想通り、転入生よりも俺が好きになったと言って顔を近づけてくる。そして会長もそれを阻止しようと抱きしめてきた。ああ、記憶を失ってなおも利用されるのか。いい加減うんざりしたので、少し仕返しをしてから先ほど思いとどまったことを実行することにした。
俺は貴方達二人共嫌いです。そう言えば余計なことを、と睨まれるかと思ったが、予想に反して二人共とても傷ついた顔をした。泣きそうな顔をしてどうして、ごめんなどと繰り返すがその演技に付き合うのも嫌なので続けて言った。
転校したいです。その言葉を聞いて転入生は顔を輝かせ、二人は絶望したような顔になった。力の抜けた二人から抜け出してやけに上機嫌な転入生に理事長室の場所を聞くと、転入生自ら案内してくれるようだ。中々良いヤツだ。みんなが好きになるのも当然か。俺に怯えてるんじゃなかったのか。
未だに呆けている二人を残して理事長室に向かった。 不毛な当て馬から、脱却するために。
「……………………………」
…なんて、絶対に言ってやらない。
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