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Which do you love? FINAL:-)
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ただ発せられた一言からは何も汲み取れなくて、獣のような荒々しい雰囲気を纏う太一を目の前に、たった一言思った。
太一なら。
それがどんな感情から来たものか、そんな事は全く解らないけれど。
「………く、そ…!!」
何も行動を起こさない俺を見て何を思ったのか、太一は息を飲んで手を離した。
「た、いち……?」
「悪い、もう、出ていくから。安心して。お休み」
何故か既に纏められた荷物を乱雑に掴み、玄関へとさっさと移動してしまう。ようやっと思考が回りはじめた俺は、急いでそのあとを追いかける。扉へと手を掛けた太一の背中に、しがみつく。
「待って……!!」
「っ……!?」
たった少しの距離を走っただけ。至極少ない運動量で、心臓は激しく脈を打つ。それは別の、感情が原因となっている事は理解出来ていないまま、ただ目の前の相手を引き留める事だけを考える。
「離して」
「嫌だ」
「離せよ……」
「嫌だって、言ってる。」
冷たくなっていく声に耐えながら、必死に抵抗する。
「お前を!! 汚-ケガ-したく無いから言ってるんだ!!」
突然引き剥がされて、熱を持った言葉に顔が歪むのがわかる。
「……なのに…っ…なんで……こんなことされたら、我慢出来なくなる……!!」
泣きそうな顔で訴え掛けられ、頭の中で何かが切れる音がした。
「じゃあ我慢してんじゃねぇよ!! いつもお前らはそうだ! 俺の為だとかなんとか言っていきなり避けたり、かと思ったらベタベタくっついてきたり! お前らのせいで……もう…訳が解らない……なんでこんなこと言わなきゃいけないんだ……」
ムシャクシャする頭に手を当てて、その時視界に入った太一の顔に、頭を打ち付けた。
「___っ__________!?」
太一は相当驚いていて、言葉にならないと言うように此方を見つめてくる。
「さっき解った。」
目を伏せてそう告げる俺に、太一は更に不思議だという色を加えた。
しかし顔を上げる訳にはいかず、少し迷って、ぎゅっ、と彼を抱きしめる。
「太一が居なくなると思うと、死にたくなったんだ。……多分もう…お前が居なかったら生きてけない。」
太一は今、どんな顔をしているのだろう。そんな思考と共に、この言葉を伝える最後の一歩を踏み出させた人物の言葉が蘇る。
『俺に遠慮して自分の言葉を伝えられない位なら、俺は死んだって構わない。お前の人生を惑わす権利は、俺にはないから」
いつの間にかそれは鼓膜を通して伝わってきて、思わず顔を上げる。
その声を発したのは、太一だ。
しかし肝心の彼は虚空を見つめ、苦しそうに目を閉じた。
「瀬見さんに死なれるのは、困るよな」
そのあと呟かれたのは、先程の言葉を発した人に告げられた言葉で吹っ切れたような内容で。
「……好きだ、賢二郎。」
抱きしめ返された腕は震えていて、酷く頼り無かった。
どこか不安気な相手に、意地の悪い一言を浴びせる。
「……知ってるよ」
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