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ー1章ー
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「お疲れ様ッス」
いつも通り、いつもと同じ時間。
僕の通っている学校の正門に立つ人物がいる。
「…お疲れ様です。」
僕は彼の名前を知らない。
「こんな遅い時間まで部活動なんて大変そうッスね~…」
「はい。練習は確かに大変です。」
きっと彼も、僕の名前を知らない。
「…キミはいつもココにいますね。」
「そッスね。一緒に帰りたいんスよ。」
「いつも送り迎えしてくれなくてもいいんですよ。大変でしょう?」
「い、いいんス!俺がしたくてしてるんスから!」
「…そうですか?」
「そうッス!」
「そうですか…。」
(キミは、面白いですね。)
お互いに知らない事だらけなのに。
いつ出会ったかさえ、おぼえてないくらいなのに。
「…?何見てるんスか?俺の顔になにか付いてる?」
「いえ、何も。」
彼は、僕が帰る練習終わりでも、部活がない日でも正門(そこ)に立っている。
僕が帰ってくる時間に必ず。
寸分の狂い無く立っている。
勿論相手の携帯番号を知っているわけでも、待ち合わせをしているわけでもない。
何故かそこに居るのだ。
「…ねぇ、今日は沢山友達と話した?」
「いえ、僕はあまり人に好かれてはいません。」
「え、そうなの?」
「はい。自分で言うのもなんですけど、あまり空気のよめるタイプの人間ではないんです。」
「えぇ~!俺は君のことすっごい好きッスよ~!」
「そう言ってくれるのは、キミだけです。」
「んん~…みんな見る目ないんスね。」
もったいないッスよ!と、彼は続けた。
素直な表現をする人というのは第一印象として受け止めているところではあるが、やはり面と向かって言われるのは慣れない。
だがきっとコレは説明してもわかってはもらえないだろう。
以前ではあるが、気はずかしいのでやめてもらえないかと交渉したところ『思ったことはすぐに態度にも口にも出るタイプ』なので無理だと言われた。
「ね、もうそろそろ君の家に着くッスよ!」
「あぁ、本当ですね。…今日も送ってくださりありがとうございました。」
「ん~、ほんとかたいッスね~…俺相手にはもっとラフな感じでいんスよ!」
「いえ、そういうわけにもいきませんよ。それにだいたいいつもこんな話し方なので…」
「そッスか…。ちょっとさみしい気もするけど、まぁいいッス!」
「はい。」
「じゃ、また明日ね!」
「はい。お休みなさい。」
「うん、お休み~!」
そうして、僕は玄関の前まで送ってくれた彼を見送る体制をつくる。
コッチをみてぶんぶんと勢いよく手を振る彼に、自分もゆっくり手を振り返した。
「じゃあね~っ!」
「はい、また。」
気が済むまで手を振った彼は、僕から目を離し前進しようと一歩前へ出て、消えた。
「……。」
ふわりと、暗闇に。溶けるように。消えた。
「……また、明日。」
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