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夜想曲 Ⅲ〜side晃牙〜
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帰ろうかとギターを背負った時 綺麗な音色が聴こえ
導かれる様に音楽室の前に来ると そっと中を覗いた
「…リッチ〜」
そこにはクラスメイトの 朔間 凛月が
窓際でピアノを奏でていた
その直ぐ後ろにある大きな窓の外が
紫から青へのグラデーションになっていて
コイツの背景に とても合っていた
この兄弟はこういう幻想的な色が本当によく似合うと思う
「…コーギー⁇」
俺に気付くと 手を止めてしまった為
中に入り グランドピアノに寄りかかった
「止めんなよ もうちょっと聴かせろ」
フッと笑った顔に 吸血鬼ヤロ〜の面影を見てしまう辺り
俺も大概だと思う
…… ♪ ♫ ♩ ♪ ♬
細い指から奏でる旋律は 何処か儚げで胸に染みた
クラシックなんて 全くと言っていい程興味は無いのに
何故かココから離れる気にはなれなかった
「…随分遅くまで居たんだね 練習⁇」
「………」
弾く手を止めずに リッチ〜から質問が飛んで来た
視線は鍵盤のままだった為 目は合わない
さっきの行為が頭を過ぎり 斜め下を見ながら答えた
「その予定だったんだけどよぉ…
お前んとこの兄貴が全然起きねぇから
結局 一人でギター弾いて終わった…」
「へぇ…」
最後まで繊細な音色を響かせて リッチ〜の指が止まる
「…コレ…何て曲だよ⁇」
「コーギー クラシックとか興味あるんだ⁇」
「ねぇけどよ 別にいいだろ…」
俺の返答に 目を細めて小さく笑った
その顔が何だか寂しそうに見えて 胸の辺りが騒つく
「…ノクターン……明け方の歌だよ…」
「明け方⁇」
「…そう…夜を想う曲…」
「………」
何てコイツにピッタリの曲なんだと思った
どうりで 妙な響き方をする筈だ
「…最近ね…ま〜くんの寝顔を見てると
夜が明けなければ良いのにって 思うんだよね」
「………」
「このまま ずっと俺の隣に居てくれたら良いのにな〜
なんてね…」
「…いつも居るじゃねえかよ」
「…そうかな」
はたから見たらそう見える
衣更が朝迎えに行って 同じ教室で過ごして
なんやかんやと世話を焼かれて…
たまにコイツが年上だという事を 忘れてしまうくらいだ
「…ま〜くん忙しそうだし…それに…」
「…それに⁇」
「…ずっと一緒に居るのは…難しいから…」
何かを堪える様に 口を引き結んでいる
牙が当たったのか 口の端から血が滲んでいて
俺はそれを 親指で拭った
「どういう意味だよ⁇」
「…コーギーには内緒」
「あ⁉︎」
俺の指をペロッと舐めると
いつもの様に悪戯でも思い付いたかの様に笑った
「気になるなら 兄者に訊いてみたら⁇」
「…じゃあいい」
あの野郎に訊いたところで
まともに答えてくれるとは思えなかった
「やっぱり自分の血じゃ お腹膨れないよ〜」
鍵盤の蓋の上に突っ伏しながら そう嘆いていたが
俺は自分の首筋を掌で覆いながら
頭を搔く事しか出来なかった
さっき朔間先輩に吸われたばっかりで
コイツにまでは 与えられないと思ったから
そんな俺の戸惑いに気付いたのか
リッチ〜が にやにやとした顔を向けて来た
「いいよ コーギーのは 兄者に怒られそうだし」
「は⁉︎ あんな奴関係ねぇよ‼︎」
「ふ〜ん⁇」
アイツと同じ色の瞳に見つめられると
全てを見透かされそうで落ち着かない
「帰る‼︎ じゃあな‼︎」
「ん〜 ばいば〜い」
音楽室を出ると 窓の外には綺麗な三日月が出ていた
欠けているその様は どこか笑われている様で
今の俺には お似合いだと思った
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