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Ⅳ ~ いつも隣にいた君と
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佑と拓馬の中高生時代の話、
「Ⅰ ~ 思い出はいつも君の隣で」の拓馬視点。
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『なぁ佑、お前高校どうすんの?』
『んー…普通に普通科に進んで進学する、かな』
『じゃあ上手くいけばまた一緒だな!よろしくなっ』
くるくるとシャーペンを回しながら答える佑は、俺の言葉を聞いて少しだけ微笑む。
“あの事件”に巻き込まれてから人を寄せ付けなくなってしまった佑。
それでも俺とは一緒に居てくれる、それがすごく特別なことなんじゃないかなんて嬉しかった。
『結局拓馬と一緒かー』
『何だよ嬉しいくせに!』
『嬉しくねーよ、馬鹿っ』
そんなことを言いながら、お互いに喜んでいたのは分かってた。
結局学科もクラスさえもずっと同じだった俺達は、3年間また離れる事なく一緒に過ごした。
県選抜に選ばれる程サッカーに打ち込んだ3年間。
それでも佑の弓道部の休みと合わせて遊びに行ったりもして、結構楽しい高校生活だった。
いつの間にか言葉で言わなくても、仕草や表情を見れば大体の事は伝わるようになっていて、いつも隣に佑がいるのが当たり前だった。
そして、晴れて大学生となった俺達は、今一緒に大学の門の前に立っている。
「ここまで来たら腐れ縁だよな…」
「そうだな!っていうかお互いの家まで徒歩5分の距離ってのも近すぎでしょ!」
「学科も一緒だし?」
「おう!取り敢えずはあと4年、よろしくなっ!」
佑は飄々としていて掴みにくい奴だなんて思われているけれど、本当は繊細で人一倍気遣いのできる奴だって知ってる。
大学でもこれまでと変わらず隣にいられる。
俺だけじゃなく、佑も嬉しいと思っていてくれたらいい……なんて、そんなの恥ずかしいから口が裂けても言えない。
「…ありがと」
「ん、何か言った?」
思わず聞き返したけど、嘘だよ、ちゃんと聞こえてた。
そんなのこっちのセリフだ。
ありがとう、俺の隣に居ることを選んでくれて。
「何も?…でもさ、また一緒なら4年間楽しく過ごせそうだな」
佑は恥ずかしそうにはぐらかしたけれど、一緒に居れば楽しい、そう思ってくれていて良かった。
なぁ佑、知らないだろ?
俺だって今まで佑の存在にたくさん助けられてきたんだってこと。
「…入学式始まる。中に入ろう」
「おう!」
いつか、君がその手で俺や他の人間に触れる事が出来るようになったらいい。
そして、誰よりも君の幸せを願う。
どれだけ時間が掛かったとしても…俺は隣でその時を待ち続ける。
いつも隣に居た君を見守っていようと思う。
END.
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