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「おかえり」
「…ただいま」
教室に戻り席に着いた和樹は、楽しそうに話をする唯と佑の様子を見ながら珈琲を口に含んだ。
唯に真っ直ぐに笑みを向ける佑の様子に、ちくりと胸が刺されるように痛む。
「ちょっと羨ましかったりするでしょ…唯ちゃんのこと」
「んー……まぁ、否定は、しない」
一度告白して断られたとはいえ、堂々と好きだと公言できる唯が羨ましい。
自分には義理と装ってすら渡すことは許されていないのだと、2人にも分からないように溜息を吐いた。
「いっそのことカズが作ってあげちゃえば?」
「そして告白しちゃえば?」
「はぁっ!?!?いや、それは……無理…っ」
2人の突然の提案に和樹は勢い良く顔を上げると、暫く視線をさ迷わせた後に机に突っ伏した。
正直、告白までこじつけようと思ったことはいくらでもある。
しかし、ふと冷静になって考えたときに、友人、同性、他にも様々な不安要素があり過ぎて、友人の1人という立ち位置から身動きが取れなくなってしまうのだ。
「カズ疲れてる?大丈夫か?」
「…っ!大、丈夫」
「そう?」
相次ぐ告白に和樹が疲れていると思ったのか、戻って来た佑が肩をつつく。
ちらりと視線だけ上げた和樹に、そうだ、とポケットから何かを取り出し手に握らせた。
「今日甘いものばっかり貰ってるみたいだし…苦いのとかあった方がいいかなって。あげるよ」
「あぁ…ありがとな」
手のひらに目を向けると、珈琲味の飴が2つ載っていた。
じゃあ俺、次の専門科目あるから、と教室を出ていく後ろ姿を見送り、また手のひらの飴に視線を落とす。
「チョコじゃないけど、良かったじゃん」
「ん」
「てか、カズも同じ講義じゃなかったっけ?先に行っちゃったけど…」
「え?あ、そうだな、行ってくるよ」
この専門は2人で受けていたのだと思い出し、急いで机の上を片付けると、リュックを肩にかけ後を追う。
ポケットに仕舞った飴がかさりと音を立てて、少しだけ口元が緩んだ。
まだ気持ちを伝える勇気は持てないけれど…時々小さな幸せを感じる事くらいは、許されるだろうか。
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