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本能
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熱が上がったのか、体の端から端まで全てが熱く過敏になっている気がする。布団が肌と擦れるのも痛いような気がして、それでもベッドの中で黙ってもいられなくて、何度も寝返りを繰り返した。
「はぁ…水…」
喉の渇きは特に辛くて、水をもらいにベッドから起き上がろうとした時、体の中心部から脊髄を走り抜ける様に風邪とは別の熱量が溢れてきた。息が苦しくて、心臓が強く脈打つ。それは抑制させようと思えば思う程に、欲望を駆り立てた。その熱量はあっという間に体から溢れ出てきてしまい、自分を満たす為に他者を誘惑しようとしている。
これがΩだ。
「はぁ…マジか…最ッ悪だな…」
発情期が来た事はすぐにわかった。狂いそうな程に求めているものがあるから。
だけど…
「はっ…それはないって…」
今、この欲を満足させられるのは谷原しかいない。だけど、愛なんてないのに谷原とそういう事をするのは嫌だ。Ωの本能に負けるなんてごめんだ。何のために今まで頑張って、抑制剤を飲み、欲望を満たす為だけに近づいて来た奴らを蹴散らしてきたのか分からない。
それは、それだけは絶対嫌なのに、
抑制剤を飲まないままではどうする事も出来ないのも現実だ。
「鎮まれ…はぁ…絶対…こんなの嫌だっ…」
熱い体を何とかしたくてベッドから這い出てみたけど、体が思う様に動かない。発情期なんてまともに来た事がなかったから、こういう時にどうしたら楽になれるのか、全然分からない。なんとかまたベッドに戻ろうとしたけど、なんだか上手くいかなくて膝を付く。
もう寝て誤魔化すしかないな…
そう思った時に部屋の扉が開いた。
谷原が部屋に足を踏み入れる。そう一歩近づくだけで、俺の中の血はありえないほどに体を巡る。
近づくな。
これ以上側に来たら、
俺の理性は本能に乗っ取られる。
谷原にそう伝えたくても、口から漏れだすのは熱い吐息と甘いフェロモン。熱で浮かされている今、視界が歪むのは涙のせいだ。
来るな…絶対に…こっちには…来ちゃダメだ
そう訴えてるつもりなのに、谷原にはきっとそうとは写らなくて、目を見開いて唾を呑み下す姿が見えた。
俺の誘惑に谷原が揺れている。
そう感じただけで、俺の中の性欲はさらに首をもたげる。
もっと、もっと、俺を見て…
俺から目を離さない谷原。きっと風邪を心配してくれたんだ。けど、状況はもっと最悪だ。
だって俺は今、無性に谷原に抱かれたいんだ。
「…はぁっ…谷…原…はぁ…」
触れたい…触れられたい…もう何度も交わした口づけを、何故かこんな時になって思い出す。
舌と舌が触れ合った時、ピリッと電気が走った様に痺れたのを覚えてる。
谷原だけじゃないんだ。俺だって感じてた。
αとΩがもつ、本能ってやつを。
上手く動かせなかったら体がやけに軽く感じて、俺は衝動的に立ち上がると谷原を押し倒した。自分の下で驚きと、僅かな興奮を秘めた目が俺を見上げている。
あぁ、なんて官能的な状況だろうか…
「俺の理性を試してんのか?」
谷原のその言葉に俺は、
「試して欲しいなら、試してあげるよ?」
と、口が勝手に囁いた。
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