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奇なり。
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「帰るな。俺の話を聞いてくれ。」
谷原にそう言われてリビングに引き戻された。ソファーに座らされて、谷原は俺の横で向かい合うように座る。
なんか…近いし、谷原がちょっと怖いし…それに、さっき言ってた事って…一体なんなんだ。
「はぁ…これから話す事、おまえは信じないかも知れないけど、全部事実だからって事は先に言っとく。」
「…な、なんなの」
「まずな、さっきも言ったけど俺は雅と付き合ってない。付き合った事は過去に一度もない。」
「…は!?嘘!!だって…」
学校中が認知してて、α同士だからって黙認されて、でも雅とは別れて…だって、雅は泣いてたよ!?
「雅が付き合ってたのは俺の弟なんだよ。」
「お、弟!?」
「そう、なんで知り合ったんだか、俺は弟と雅が付き合った後に弟から紹介されたんだ。雅の事はαって事もあって学校ですでに知ってたから驚いた。うちの学校の生徒だけど、でもだからって反対する理由もないからな。大学生の弟は実家に住んでて、雅は度々実家に来てたみたいでな。俺が帰る時にたまに会ったりもしてたんだ。そこでおまえの話とか、家族の事とか聞く事もあった。」
「…はぁ」
予想を超えた話にうっかり関心の声が漏れる。
「学校で俺と付き合ってるっていう噂が広まったのは、多分誰かが実家に雅が入るところを見たとか、弟と雅がいるところを見たとかそういう理由なんだと思う。弟と俺は結構似てるからたまに間違えられる事はあるし、まさか弟といると思わないから、俺じゃないってことを疑いもしないんだろ。」
「なんで…否定しなかったんだよ」
「意味がないだろ。それでお互い学校に居辛くなるわけじゃなかったから。雅は言い寄られる事がなくてむしろ都合がいいって言ってたな。」
「でも…あんたは違うだろ…」
「俺もそれで変な女が寄って来なくなるから良かったんだよ。αってだけで近寄ってくる女だって結構いるんだぞ?」
「でも、じゃあ、雅はその、弟さんと別れたって事?」
「いや、別れてないけど。」
はぇぇぇええぇえ!?
ど、ど、どゆこと!?あの涙は一体なんなわけ!?
「別れたっていう情報を流す事にしたのは俺のせい。」
「なん…で?」
「それは都合が悪くなったからだ。」
「どういう意味?」
「言ったろ。お互い利点があったから今まで噂をそのままにしてたって。でも、それだと都合が悪くなったから別れたって事にしてくれと俺が雅に頼んだんだよ。」
「だからどういう事?」
「…察しが悪いのはわざとなのか?」
「何が?」
「いや…いい。つまりは、恋人がいるって事にしておけなかったんだよ。…おまえは、好きなやつを口説くのに、恋人がいてもいいなんて考えたりしないだろ?」
「あ、当たり前だ!…って事は谷原に好きな人が出来たって事?」
「…まぁ、そういう事だな。」
「へぇ…誰?学校の人?先生とか?あ、川嶋先生!?たまに一緒にいるもんな。小さくて可愛いって言われてるじゃん。」
川嶋先生は学校中で皆に可愛がらてる。小さくて、なのにおっぱ…えふんっ…が大きいって、特に男子の中じゃ度々話題になってるのを聞く。確か国語の先生で、なんというか、物語を語らせたら眠くなりそうなおっとりした人だ。
「…なんだおまえ、川嶋先生好きなのか?」
「いや、俺は別に。可愛いなとは思うけど。」
「ふぅん…」
「で、好きなの?川嶋先生。」
「さて、どうだかね。」
「うーわー、大人の余裕みたいなの?やだやだ…」
「違うけど、今はその話じゃないだろ。」
「あ…はい。」
「それで、雅が泣いてたってのは、その事を雅に相談した時にそこに弟もいたんだよ。そしたらその噂があった事をその時初めて知ったらしくて、その事で喧嘩になったんだ。別れる別れないって話まで出て、割と派手な喧嘩になっちゃったんだけど、今は元通りのはずだ。しかしまぁ、否定するのを面倒くさがった俺にも非はあるから、おまえが俺に復讐をしようとするのも、ある意味間違いじゃないなと思ってな。でも、素直に聞いてやるのも癪だったから勝負にしたって事だな。」
「なんだ…それ…」
「な、いい人なんかじゃなかっただろ。」
「わけわかんない…じゃあ本当に、俺の復讐なんて意味なかったんだ…」
「そうとは思ってないけどな。」
「…あれ、でも、前に、雅はセッ……がどうのって言ってなかった?」
「…言ったか?口から出任せだ。大人のたしなみだな。」
「はっ…最低だな。」
俺が悪態を吐けば谷原が笑った。
なんで笑ってんだ?
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