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気持ちは…
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なんと例えたら伝わるだろうか。
それはあまりにも規格外過ぎて頭が考える事をあっさりと放棄したこの衝撃。出会うはずのない場所で、出会うはずのない人と出会ったら、人は考える事をやめるらしい。
俺は受け取った箱を所定の位置に戻して、「ありがとうございました」と礼をして離れようと思った。それを腕を掴んで引き止められる。
「…海斗」
渓史さんが名前を呼ぶ。
心が騒ついた。
3年振りに聞く声。
でも、そうだった。
渓史さんはそういう声だった。
何年経っていても体はそれを受け入れて馴染んで行く。
もっと呼ばれたい…
そう思う自分に呆れる。
「…お久しぶりですね、谷原先生。」
「久しぶり。まさかこんなところで会うなんてな。」
こんなところっていうのは別の街でって事か、それともスーパーでって事か…いや、どっちもか。
「えぇ、本当に。…お元気でしたか?」
「まぁ…」
そう言いながら渓史さんは空の方を見た。空はお菓子の棚で何を買うか選んでいて、こっちの様子には気付いてない。
渓史さんに空を見られる事はまずい気がして、何かを悟られる気がして怖かった。
「あの、すいません、俺今あんまり時間がなくて…」
「あぁ、そうか…」
掴まれていた腕を引いて渓史さんの手を解く。触られてたところが、熱い。そう感じるのは俺が意識してるからだろうか。
空に駆け寄って「決まった?」と聞いたら、満面の笑みで「これ!」って言った。
その笑顔はどこか渓史さんに似ていて、心臓が泣く。
「じゃあもう行こっか」
「うん!」
空と手を繋いで歩き出す。
渓史さんがいた方は振り向かない。
例え心が痛くても、
俺は笑わなきゃならないから。
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