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はしゃぐ君に苛立った
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無事に式が終わり、各生徒に割り振られた教室に向かう道中、シュウは見覚えのある仲間を探していた。
一年の頃に仲良くなった男達の中の数名は、再び同じクラスになれたが、そっくりそのまま二年生に移れた、ということはなく。
自分と同じ方向を歩いていく知らない男子を、シュウはキラキラ輝いた目で眺めている。
今日からこいつらと一緒に生活するんだと思えば、自然と心が浮き立った。
共に勉学に励み、時に協力しあい、そして友情を育んでいく。
空間を共有することにより、新しい友達が増えるものだ。
シュウは期待に胸をふくらませ、よりいっそう表情を明るくさせた。
どこまでも続く廊下を一人で進むのも味気がないので、さっそくシュウの大好きな友達作りを始めてみる。
まずはそこらへんにいる男子に話しかけて、手探りしながら距離を測ろう。
初対面の人間に話しかけるという恐怖、緊張、楽しみが混ざりあい不思議な感情を産み出す。
演説する前の緊張は心地よい、と耳にしたことがあるが、それと一緒なのだろう。
ファーストコンタクトは、第一印象に多大な影響を及ぼすのでここは緊張していかなければならない。
大きく息を吸い込み、意を決して知らない男子に話しかけようと瞬間
「いだだだだだ!」
背後をとられて肩を爪でえぐられた。
いつの間に後ろに立たれていたか分からなかったので、右肩に迸る激痛に大袈裟に驚いてしまった。
それにしてもすごい力がかけられている。
リンゴなど一瞬でリンゴジュースにしてしまいそうだ。
握力がバカ強くて、自分にこんな嫌がらせをしてくる男を、シュウは一人しか知らない。
「ハルト!痛いから離せ!」
シュウの肩に爪を食い込ませていたハルトは、仏頂面のまま手を離した。
圧迫感がなくなり、爪痕が疼く肩を押さえながら、シュウは唇を尖らせてハルトをじろりと見据える。
「何するんだよ。せっかく友達作ろうとしたのに、お前が邪魔するからチャンス逃しちゃったじゃん!」
「黙れ阿呆」
不機嫌に捲し立てるシュウに、ハルトは絶対零度の眼光で迎え撃つ。
見ているだけで凍り付く彼の視線を真っ向から見つめられる人間は少ない。
シュウはその数少ない一人だ。
そんなことで怯えていては、幼馴染みは務まらない。
「なにをガキみたいにはしゃいでるんだ。見ていて腹ただしくなる。大人しく教室に向かえチビが。だからいつまでたっても身長が伸びないんだ」
「そこまで悪いことしたか俺?」
撃沈するシュウに、ハルトはあくまで冷たい。
上にあるハルトの端正な顔立ちを見上げ、悔しそうに顔を歪めた。
「というか身長関係ないよな?身長伸びないのは関係ないよな?」
シュウは必死に問いかけた。
高身長のハルトをいつも羨ましく、下から羨望の眼差しで仰いでいた。
冷静で淡白とした性格のハルトが高いのは、何かしらの作用によりその高さまで成長できたのか。
もしそうならアドバイスを求めたい。
馬鹿正直に信じ込むシュウに、ハルトは淡い笑みを浮かべる。
「関係あるわけないだろバカが。そんなことも理解できないのなら、ついに脳ミソが腐敗してきたな」
そして一蹴された。
その口からは悪口しか飛び出してこないらしい。
分かってはいるが、真正面からの悪口オンパレードは辛い。
「うるせー!ちょっとボケてみただけじゃんか」
「お前はもとからボケているからそんな必要はないと思うぞ」
一の言い訳に百の悪態が返ってきた。
ひどいことを真顔でさらりと言い放つので、余計に怒りをそそられたが、これ以上言い返せば自分の精神がもたなくなると思ったので、下手に言い返せない。
「せっかく友達作ろうとしたのに…」
未練がましい呟きをもらすと、何故かハルトの眉間にシワが寄った。
それに気づかないシュウは、歩きながらハルトへの不満を語り始めた。
「俺思い立って行動しないとダメなんだよ。クラスで知ってるのってハルトと数人しかいないし。心細いんだよなーだから早く友達つくって楽しい学校生活を送りたいって痛い痛い痛い痛い!」
途中で、またハルトが無言で拳骨を落としてきた。
そのせいで舌を噛みかける。
実際目の前に火花が散ったような気さえした。
「これ以上バカになったらどうしてくれんだよ!」
「うるさい。行くぞ」
毒舌や罵詈雑言が飛んでくると思い、顔の前で腕を交差し、バリケードを作ったが思いの外ハルトは罵ってこなかった。
何だか薄気味悪いなぁ。と眉をしかめると、これでは怒ってほしかったみたいだ。
なので哀愁を漂わせながら教室へ入っていくハルトに、黙って続いた。
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