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自己紹介プロフィール
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まずは担当教師による軽い挨拶と自己紹介が行われた。
まだ青年になりたてのように見えるが、立派な教師だという。目付きはお世辞にも良くはないが、目にしっかりとした意志が込められていた。
「今日から君たちの担任をすることになった笠木流依(かさぎ るい)です。一年間よろしくお願いします」
笠木は堅苦しい敬語を違和感なく操った。
厳格な挨拶に生徒達の空気が冷え込むが、そういうのに鈍感なリョウが声を張り上げた。
「ならせんせいのことルイルイって呼んでもいいっすかー!?」
「るっルイルイ…?」
あり得ないあだ名をつけられた笠木は、白目を剥きかけている。
ファンシーなニックネームが任命されると、一気に堅物そうな教師がフレンドリーに見えるもので、ちらほら生徒側の雰囲気がなごむ。
「ルイルイかーなんか可愛いな!」
「俺もそう呼ぼっと」
「ルイルイ先生は彼女いるんですかー?」
嫌だとは言えない状況になってしまい、勝手にしろと笠木は無念の思いで机に倒れこんだ。
「…ルイルイ…いい名前っすね」
副担任までもが、無気力な笑い声をもらした。
笠木のプライドはずたぼろの雑巾以上に破かれてしまった。
「こっちは副担任の慎宮真白!(つつみや ましろ)です!」
やけくそになった笠木は、入り口付近でぼぅっとしている男を指差した。
「うぃーす。紹介にあずかりました慎宮です。ツツミンって気軽に呼んでね」
両頬に人差し指をさし、こくんっと小動物のように首を横におる。無表情だが、どこか愛らしいその仕草に、女子の黄色い叫び声が飛びかう。
慣れたように手をふる慎宮を不気味そうにみやり、笠木は咳払いをして空気を変えた。
「それでは全員の自己紹介を、と言いたいところですが生徒数が多いので、プロフィール式の紙に記入をしていただき、後日冊子にして配布いたします」
笠木は手に持っていた紙の束を、一番前に座っている生徒に丁寧に手渡しして分散させている。
慎宮はポケーと虚空を眺めている。手伝う気はないようだ。
配り終えて生徒達の目線が用紙におちたのを確認し、笠木は鋭い目付きで慎宮に歩み寄った。
「…すこしは手伝おうという気はないのですか?」
「手伝ってほしかったんっすか?」
驚いたように目を見開いた慎宮に、笠木は赤くなって小声で叩きつける。
「そうとはいってませんけどね…!常識的に考えてくださいと言ってるんです!」
「それにしてもルイルイはかなり小さいっすねー」
「あっ貴方までそんなあだ名で呼ぶんですか!それに、私のほうが年上です!敬意を払ってください!」
「まじっすか…年下だと思ってた。じゃあルイルイ先生で」
「馬鹿にしてるんですか!」
ひそひそと小さな声で喧嘩しているつもりらしいが、丸聞こえなので聞いてしまってる方は何だかきまずい。
シュウは鉛筆を持ったまましばらく新しい教師達を眺めていたが、記入欄を見下ろした。
名前と元所属クラス、誕生日などの無難な質問から、好きな物、得意なことまでのポピュラーなものまで書かれている。
最後の『好みのタイプは?』は、絶対慎宮の策略だと思いたい。
最後の枠でシュウの手が止まる。
タイプとか言われてもなー。
恋らしき恋をしたことがないシュウにとってなかなかの難問だ。
うーむ。と椅子の背もたれにもたれかかり、足裏を宙に浮かばせる。
俺、誰とも付き合ったことないんだよねー。ハルトがずっと一緒だったからさ。そーいや、あいつも彼女とかいなかったな。めっちゃ気になる。
ハルトに向かって熱い光線を送っていると、大きな背中がぶるりと震えた。熱視線を感じ取ったらしい。
ゆっくり振り返ろうとするので、慌てて質問に戻った。
…てきとーでいいよな!
かりかりと鉛筆を走らせたのは、疲れきった笠木が「残り十分です」と声をかけた数分後だった。
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