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拭えない不安に叫んだ
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「それじゃあなハルト。ちゃんとシュウを送っていってやれよ」
「おまえは変な輩に絡まれないように精々気をつけろ」
「絡まれるはずがないだろ失礼な!」
「なあリョウ。なんかあっちの不良たち、おまえのこと睨みつけてる気がするんだけど」
「えっなんで!?」
「きっと、リョウからは、いじめたくなるオーラが、漂っている」
「そんなに俺って弱そうなのか!?」
そんなことを言いながら足早に去って行った三人組を見送り、ハルトとシュウ達も岐路についた。
前までは何の意識もせずお気楽に帰れていたが、自覚してしまった今では二人きりの空間で息をしづらくなってしまう。
自然と喉を伝ってあがってくる熱を恥ずかしく思いながら、小声で「かっ帰ろうか」と囁きかけた。
そのつぶやきを聞き取ったハルトは頷き、さっさと行ってしまう。
「あっ待ってよ!」
普段通り過ぎるハルトに戸惑いながら、追いかけ始める。
人ごみにあふれかえる街並みに小柄なシュウはすぐ埋もれてしまう。今回も何人かの通行人がハルトとシュウを隔ててしまった。
いつもならここでハルトがいち早く気づいて溜息をつきながらシュウを拾い上げてくれるはずだ。
なのにハルトは気づかずそのまま歩いていこうとする。
通行人の一部分となってしまったかのように徐々に遠ざかる背中に、急激な不安を感じる。
まるでハルトが遠くに行ってしまうような錯覚に陥る。
「まって!待ってよハルト!」
俺を放っていかないでよ!
思わず叫ぶと、周りの目が一斉に向けられた。前を歩いていたハルトも目を丸くして息を荒げるシュウを見つめている。
「ハルト!」
「そんな大声出さなくても聞こえてる。どうした?」
シュウの様子がおかしいことに気付いたのか、皮肉を返さず心配そうな声をだした。
ハルトの静かな瞳で我に戻ったシュウは真っ赤な顔で首を振る。
「なっなんでもない…なんか、怖かったから」
「なにがだまったく…寝ぼけるのも大概にしろよ」
「あはは…ごめんね」
冗談めいた口調で溜息をつくハルトに乾いた笑い声を送った。
悪態をつかれたら飛びかかってくるシュウが大人しいことに、ハルトは首をかしげた。
どこか遠いところに行っちゃうなんて、そんな馬鹿げたことないよな。
笑い飛ばしたい予兆に、胸を握りしめた。
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