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上からHARUTO
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体操服に着替えて体育館へ移動する最中、先頭を歩いていたリョウがふと思いついたように口を開いた。
「あっそうだ。確かどこかのクラスが体育館使っていた気がする」
「なんで今さら思い出すんだ」
「確か2Aだったかな」
後ろをだるそうに歩いていたハルトが頭を押さえて息を吐いた。
どこか抜けているリョウの性格に振り回されるのは今に始まったことではないが、士気が急上昇しているクラスメイト達に今告げれば制裁を加えられること間違いなしである。
「とにかく無理だったらついてから知らなかったふりをしとけ。それならまだ吊るされるぐらいで済むだろう」
「え?緩和して吊るされるのか?俺の扱いそこまでひどい?」
ははは、と笑いリョウは目を柔らかに細めた。
「まあ大丈夫だろう。2Aはあいつのクラスだろうし」
意味ありげな微笑みに、疑問を抱いたが気にせずハルトは鋭い視線を投げかけた。
二人の小声での会話を後ろでちょこちょこついてきていたシュウが、首をかしげて眺めていたそうである。
もちろんカップルどもは最後尾でいちゃいちゃしていたらしい。
確認したくもないので無言でシュウ達は体育館へ向かった。
目的の場所に着くと、リョウの危惧が的中していて二つに分けられたコートを贅沢にも両方使用してボールを投げ合っているクラスがいた。
入った瞬間の静まりようと、冷たい視線の集合体にシュウは無意識のうちに体を縮こませるが、リョウとハルトが堂々とした姿勢で体育館に踏み込んだ。
「すまないが一面貸してくれないか?」
相対する全ての生徒に向かって、リョウは気のいい声を投げかける。
上からでも下からでもない態度に、凍りついていた空気がやや溶かされる。
しかし全てのコートを使用して十分な練習を行っていたというのに、突然割り込んできた輩たちに貴重な陣地を半分くれてやらねばならないのか、と不満げな顔つきの生徒もいた。
「いいからさっさとどけ。時間がないんだそんなことぐらい分るだろう」
そこでハルトの偉そうな口調が割り込んできたので、彼らの不服さは膨れた。
同学年という部分を差し置いてもこの態度と傲慢そうな表情に、せっかく溶けかけていた場の感情が再び凍りついた音がした。
静まりかえった体育館に耐え切れず、シュウがハルトの服の裾を引っ張った。
「下手に出るって言葉知らないのかお前は!相手怒らせちゃったみたいじゃないか!」
「同学年だろ。敬う必要性も時間もない」
「だから!うわ、今にも刺してきそうな雰囲気になってる!?」
だらだら冷や汗を流すシュウを鼻で笑い、ハルトは数十人分の敵意を一人で受け止める。
まだまだ余裕がありそうだから怖い。
緊迫した場をぶち壊したのは、怒りを隠そうともしない荒々しい足音だった。
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