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コスプレさせたい!
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ヒナトがリョウに引きずられて校内晒しの刑に処されている間に、教室に取り残されたメンバーはただ大人しく居座っていただけではない。
「ヒナト君はやっぱり右側だよね。委員長×問題児とか定番すぎるけど美味しいですもぐむしゃあ」
「わかったぞ。お前ふじょしってやつだな」
「…サガラ、そんな言葉、どこで知った?」
各々好きな場所に陣取り、たわいない会話に華を咲かせている。
一名目が血走って語っているが、サガラ以外ほとんど誰も聞いていない。
そんな馬鹿らしい掛け合いに興味など微塵もわかず、ハルトは目を閉じて壁にもたれかかっていた。
シュウは彼の隣で窓を見ていて、また違い世界に旅立っている様子だ。
ふとハルトが目を開け、ぼーっとしているシュウを見つめようとしたが、視界の端におかしなものが映った。本能的にそちらに意識がそらされる。
黒いフリルのワンピースに大量のフリルがあしらわれたもの、所謂メイド服や、セーラー服やピンク色のナース服が何故かそこに凄まじい存在感を放ちつつそこに存在していた。ゴスロリのようなものもある。
思わずハルトは二度見してしまった。
そんな彼に気付いた一之宮が誇らしげに胸を張った。
「ああそれ?ヒナト君に着て私の欲望を叶えようと思ったんだけど、それ以上に美味しい展開になったのでもう満腹です」
「なんで言わない。当然、着させたのに」
さりげなく鬼畜なセリフを吐き捨て、ハルトはコスプレセットを睨みつける。
頭の中に浮かんできた妄想を否定はしない。
………セーラーだな。
自分の中でそう締めくくり、ハルトは思考の大半を占める邪心を振り払った。
ふうっと一息つくと猛烈な自己主張を視線で感じた。面倒だったが一応そちらの方向を見やる。
ユツキが危険なほど瞳を血走らせ、黙々と目線で意思を伝えようとするがハルトはサガラではないので彼の無言による意思伝達は届いてこない。
舌打ちをしてユツキに「ちょっと来い」となぜか彼から場所の移動を申し出る。
サガラがぶつぶつ文句を言っていたが、珍しくユツキは駄々っこを宥めることはせずハルトの後に続いた。
「で?俺に何が言いたい」
「…言いたいことは、大体分かるはず」
人気のいない廊下まで移動し、さっそく不機嫌な様子で問いかけた。なのに帰ってきた言葉は曖昧なもの。
「分かるわけないだろ。俺はサガラではないんだ」
「あの服、着せてみたくないか?」
その一言で敏いハルトは全てを理解した。
理解したうえで眉間をもんだ。
「………そういうプレイはあまり好きじゃない」
「そんな嘘で、俺は騙せない」
ぴしゃり、とユツキに断言された。ならどうしろというのだろうか。そしてユツキは何をたくらんでいる?同じような欲望を語り合うために呼び出したのではあるまい。
「ぶっちゃけ、想像した?」
いきなり確信を突くような問いかけに、一瞬黙り込む。
嘘は通用しないとさっきの問答で分かったので、しぶしぶうなずいてやった。
「なんだ。俺が変態だとそう言いたいのか。そういうお前も同じだろう」
「当たり前」
ユツキは何故か嬉しそうに微笑した。無表情の奥に姿を現した歓喜の色を、ハルトは見逃さなかった。
「ハルトは、シュウにセーラー服を、着せたい。俺は、サガラにゴスロリを、着せたい」
「なんでお前は俺の嗜好を知ってるんだ」
「目で分かる」
「何だお前。恐怖すら感じたぞ」
「それはおいといて」
会話にならない。
ハルトは若干イライラしてきていた。だが怒鳴って教室に戻る気には不思議とならない。ここまでヒントが並ぶと答えの予想が大方ついてくるのだ。
それはユツキとハルトが同時に願う妄想の産物。
「協力、しないか?」
「協力?」
「一人じゃ、無理だ。サガラなら、簡単に折れてくれるだろうけど、シュウは難しい」
すでに籠絡しているサガラにコスプレさせるぐらいならユツキが少し手を加えれば、仏頂面ながらもやってくれるだろう。
しかし多大な羞恥心を保持するシュウに、セーラー服を着させるのは難攻不落の城を攻め落とすようなものだ。
城攻めには一人より二人、無策より策略で挑むべきだ。
瞬時に計算をしたハルトは表の表情は嫌々だったが、胸の中では青い炎がめらめら燃えていた。
「ちっ仕方ない。運命共同体だ」
「交渉、成立」
かくしてここに「意中の男子にコスプレさせる」ための協和が結ばれたのだった。
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