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まっすぐ駆け抜けろ
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ハルトの普段は淡白な顔が今は違った。
愛おしさと切なさとがまじりあい器用に片目から滴を流す。
「ハルト、俺、別れたくないよ…ずっと一緒にいたいよ…」
「数年だろ。そんぐらい耐えろ馬鹿」
「無理、無理かも。絶対無理、定期的に連絡よこさないと、浮気する」
「それは嫌だな…気をつける。後これ渡しておく」
一つのピアスを二人に分けたピアスをシュウの手に握らせる。これでシュウの手元には完ぺきに一つのピアスが揃ったということだ。ハルトは穴のあいた耳を触る。
「俺が帰ったきたら返せよ。それまで肌身離さずつけとけ」
「ハルトだと思って大事にする…」
「それでいい。それじゃあ、またな」
名残惜しくすがりつくシュウの手をそっと外し、ハルトは離れた。空いた距離を埋めようと足が動こうとするが、無理やり抑え込んだ。
「あ…ちょっと待って。拳突き付けて」
シュウのお願いに首をかしげつつも言われた通りグーの形にした拳をシュウに突き付けた。その拳にこつんっとシュウの握りこぶしが重ねられる。
「これが俺らの秘密の合図だったよね…意味は覚えてる?」
「ああ…覚えてる。忘れるわけない」
今度こそハルトは両目から涙をこぼしつつほほ笑むという器用な芸当を見せる。
そして今度こそ振り返らずに車に乗った。シュウもハルトを振り返らない。
彼らの運命は、すでに決まっているのだから未練などない。
まっすぐ再会の日まで走り抜けるだけだ。
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