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フォロミー・フォロユー
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「うー何かまだ働き足りないっすね」
早めに仕事を上がった慎宮はだらけたスーツを肩にかけながら、歩いていた。今日の彼の仕事は簡単な書類をまとめるだけの単調な作業だけだった。
ここのところ帰るのが遅いから、と笠木の計らいで帰宅を命じられたのだ。
そんな優しいところも好きだ。
と笠木が聞いたら逃げ出しそうな事を思う。
「それにしても節々が痛い…もう歳かな」
朝起きた時から、右足と左肩が鈍痛で呻いている。どこか少し体調が悪いなと思っていたが筋肉痛とは。
20を超えたばかりの慎宮にとってなかなか洒落にならない事態である。
明日から軽いトレーニングをしようと心に決めつつ帰り道をまったり歩いていると、中央駅の前を通り過ぎた。
そこから少し離れた路地裏から、日常では普通聞かない音が慎宮の鼓膜を揺さぶった。
通行人たちも異変に気付いている様子だが、厄介事には首を突っ込みたくないのか早足になってその場を離れている。
「ん?風が騒がしいな…」
ぼそりと中2台詞をつぶやき、野次馬心をくすぐられた慎宮は近づいてみることにした。
近づけば近づくほど比例して、鈍い悲鳴と殴りつける音が聞こえてくる。
ひょっこり除いてみると、何人もの男たちが倒れこんで呻いていた。
そして立っている二人のうち背の低い男が、長身に殴り飛ばされ慎宮のほうにまで飛んできた。
「うおっ」
軽々避け、慎宮は腫れあがった男を見下げる。制服からみると殴られたのは彼の学校の生徒ではないようで少し安心する。
だが無関係というわけにもいかなかったようだ。
「騒がしいのは風じゃなくて、喧嘩だったんすかー」
「…慎宮か」
頬の返り血をぬぐっていたハルトは慎宮の登場にさして驚いた様子は見せなかった。
「何やってんすか。えーっと…ハナト君!」
「なんだその情けない名前は。鼻たれ小僧か」
「それにしてもこの人数を一人で?かっこいいー」
5人もの相手を一人でつぶしたハルトに称賛を贈ると、苦々しい表情が返ってきた。
「やめてくれ。それよりあんたは帰れ。ここにいると巻き込まれるぞ」
「なんっすかーそれ。ハヤト君は俺を足手まといにするき?」
「ハルトだ。違う、そろそろどこかに行かないと警備員が来る」
慎宮の身を案じての催促に、不敵に笑ってみせる。
「あーもういいからハルト君がどっか行って。ここは俺に任せて」
「は?何言ってるんだ。そんなことできるわけがないだろ」
「俺を誰だと思ってるんっすか。こういう後始末は大人に任せておけばいいんっすよ」
そう言いながら慎宮はハルトに向かって黒いハンカチを投げつける。受け取ったハルトはハンカチを見てから慎宮に視線を戻した。
「それで汚れ拭いてお姫様のところに帰りなさい。きっと待ってる」
「…借りはいつか返す」
「それよりハンカチ返してくださいねー。んじゃーまた明日会いましょうハヤテ君!」
「ついにハしか合ってないぞ」
慎宮の好意に甘え、ハルトは走ってその場を後にした。
この状況を修正できるだけの能力を持っている慎宮は、自らの携帯を取り出し警察に電話をかけたのだった。
警察に見つかる前に自分が通報したほうが、目撃者であるという印象が強く持たれて後々面倒事に巻き込まれるリスクが少なくなる。
「あーあー。せっかくの休みなのに厄介事に首突っ込むのはなんでなんっすかねー。あの人に心配かけさせたくないからかなー」
そんな情けない呟きと共に思い浮かんできた笠木の顔に、慎宮は一人苦笑したのだった。
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