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それは開けてはいけない禁忌の書物です。
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土曜の午後はシュウ達と同じように遊びにやってきた若者であふれ返っている。ややうっとおしいほどにカラフルなヘアカラーが目を焼き尽くしてくる。
「行きたいところないのか?」
「ハルトは?本屋とか行かなくていいの?」
「………」
「ハルト?」
「忘れてた。小説買いに行くんだった」
どうやら彼も本来の目的を忘れていたようである。今日のハルトは本調子ではないらしい。
そんなこんなで本屋に流れ着く。
自動ドアを潜るとひんやりした冷気が身体の熱を冷やした。ゲーセンとは違って心地よい涼しさにシュウは思わず目を細めて達観の表情をする。
「気持ち悪い」
冷徹な視線を投げかけ、さっさと一人で小難しいコーナーに移動してしまう。
取り残されたシュウはしばらく置いて行かれた仔猫のように切なくなるが、すぐに彼も漫画コーナーに走った。
漫画は基本的に好きなシュウにとって買えはしないが、楽しげにタイトルが連なっている本棚を見上げているだけで満たされていくような感情に陥る。
「あっこれ新刊出てたんだ!買いたいけど金がねえ!」
名残惜しい気持ちになりながら本を棚に戻す。小遣い日が来たら買おうと決めて次の棚にうつった。
知っているタイトルから聞いたことのあるもの、そして全く知らないのという順番でシュウの視界を横切っていく。
すると、すごい背表紙を見つけてシュウの動きが止まる。
難しい漢字があって読めないが、雰囲気からして好んでいる少年漫画とは明らかに違う。妙な興味をそそられ手に取ってしまった。
立ち読み予防のため封がしてあるが、表紙を見るだけでシュウの好奇心はおさまるだろう。表紙というのはその本のすべてが詰まっているといっても過言ではない。
「うん?どういう内容何だこれ」
男二人がいる。背景がやけにキラキラしていて乙女漫画のようだ。
しかし男二人と少女漫画。どうも合わない気がする。やはりタイトルを読み解かなければ理解できないのだろうか。
少ない脳内辞書を引いてうんうん唸っていると、声をかけられた。
「おい何してるんだ。行くぞ」
「あっハルト!なあなあこの漢字読める?」
博識なハルトにかかればこんな漢字、数秒で読めるはず!そう確信したシュウは思いっきり突きつけてみた。
するとハルトの眉間に本日何度目かの皺が集結する。それもなかなか見れない深さだ。
「お前…それは俺に対する嫌味か」
「えっ!?」
「とっとと元あったところに戻せ。帰るぞ」
「えっちょっ!もう帰るの?」
「一気に帰りたくなった」
苦々しく吐き捨ててさっさと店の外に向かうハルト。シュウは慌てて本を突っ込んで、彼の後を追って帰宅したのだった。
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