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楽しみ前は試練
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「あと一週間で夏休みだな!」
機嫌がいいシュウが叫ぶ。
季節は夏真っ盛りだ。ギラギラと照りつける太陽が半そでから除く二の腕を焼きつくして、真黒にする季節がついに訪れた。
暑いだけでなく学生にとってのパラダイスである長期休みを残り一週間に控えており、そのせいか生徒のモチベーションがあがってきている。
シュウもその一人で、早く来ないかなーと待ちわびていた。
にこにこアイスを食べるシュウに、リョウが太陽と同じぐらい晴れやかな笑みを向けた。暑苦しいリョウも夏が好きなのだ。
「そうだな!やっといっぱいサッカーができるよ」
「ユツキー夏休みどっか行かねえ?海とか行きたい!」
「サガラとなら、どこへでも」
「あーあついあつい!急に気温が上がったなー!」
わざとらしくシャツをパタパタさせるリョウは、一人大人しく勉強をしているハルトに視線を向けた。
黙々とシャープペンシルを走らせている勉強馬鹿に、しょうがないなと言わんばかりの息を吐いて、肩に手を置いてやる。
「そんなに勉強ばっかりしてると、目が悪くなるぞ」
「黙れ」
うっとおしそうにリョウの掌は払われた。
振り払われた手を切なげに見降ろすリョウを押しのけて、口元にアイスクリームが付着しているシュウがやってきた。
「ハルト!なんで勉強なんかしてるんだよ!夏休みだぜ!遊ぼう!」
「年中脳内夏休みが、今更長期休みが来たからといって騒ぐな」
「そりゃ騒ぐだろ!もうちょいでずっと休みが来るんだぞ!学生ならはしゃいで当然当然!」
ハルトの辛辣な一言にめげないのは、夏休みというビッグイベントの訪れが近いからに違いない。
サガラとユツキも楽しみにしているようで、リョウも同様だろう。
しかし、何か大切なことを忘れているようなのでそれを思い出させてやることにした。
何て自分は優しいんだ、と自画自賛するハルトは器用にシャーペンをくるりと指で回す。
「おまえら、大切なことを忘れていないか?」
「はっ!新しい水着買うの忘れてた!」
「ひねるぞ。もっと大切なことだ」
「うーん…あっ!ユツキ!浮輪買いに行こうぜ!忘れてた!」
「わかった。放課後にでも、買いに行こう。可愛いの、選ぼう」
「いちゃつくなら二人の時だけにしろバカップルが」
「海の家でバイトするための履歴書か?早めに提出だったよなー」
「いい加減海から離れろ」
「じゃあなんだっていうんだよ!」
「知りたいか?なら教えてやる」
早く教えろ、と答えをせがむシュウに、とびっきりの笑顔でお望み通りの現実を突きつけてやった。
びしっとペン先をシュウに突き付けて、ハルトは楽しげな声音を吐き捨てる。
「次の土曜を挟んだら、夏休み前テストがあるぞ」
世界から音が消えた。
窓から入り込んでくる蝉の声が、やけに反響する。
一斉に冷え込んだ空気にハルトは満足げな笑みを浮かべて勉強に戻ったのだった。
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