アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
スタディーダウン・ステイクール
-
「ユツキー。ここの問題ってどうやって解くんだ?」
「これは…まず、問1の問題解いて、そして…」
「この漢字何て読むんだろうー」
「んー。辞書使って調べたほうが覚えられるぞ!」
と、最初のうちはこんな具合に一応は勉強していた。
監督していたハルトもこの調子ならある程度の学力は付きそうだ、と一安心するが、つかの間の泡沫の夢を見ていたにすぎない。
すぐにだれはじめた。
「うー…数学なんて嫌いだっ!国語のほうがぜってぇ楽しいって!」
「サガラ…諦めないで」
暴れだしたサガラをユツキは必死で抑えた。勉強嫌いのサガラを縛り付けるのはユツキにしかできない芸当だが、いかんせんやかましすぎる。
ハルトは鋭利な視線を投げかけて黙らせようとするが、大人しくしていたはずの二人も騒ぎ始める。
「リョウー、俺も面倒臭くなってきた!ゲームしたい!」
「たっ耐えろシュウ!ここで欲望に負けたら夏休みがつぶれるぞ!」
「もうやだ!勉強なんて何の役に立つんだよ!」
「小学生かお前は」
騒がしい友人たちに嫌気がさしてきたハルトは、こめかみをひくつかせながら低い声を出す。
だがその程度で黙れる奴らではない。静かな空間で難しい知識を詰め込むだけのフラストレーションもたまってきて、暴走しだした。
「ユツキー…今回俺テストで100点とったら何してくれるんだ?」
「え…なに、といわれても」
「何かしてくれたらやる気でるかもー…たとえば頭撫でてくれるとかー…」
「サガラ、眠い?でろんって、してきてる」
サガラは眠い時デレデレになるという分かりやすい性質をしているので、ユツキはすぐ察しづいた。
意識を覚醒させようとするが、数字が踊る教科書を指さしてもサガラの反応はどんどん夢見に落ちていく。
「ゲームしたい!マンガ読みたい!昼寝したい!」
「高校生の三大欲求だなそれは。というか英語っていつ使うんだ?俺は日本人なんだがな」
「きっと外国とか旅行に行った時だよ!俺、フランスのロンドン行きたい!」
「どこ行くつもりだ!?」
「それかブータン」
「渋いな………俺はブラジル行ってサッカーの試合が見たいな!きっと本場のサッカーは凄いんだろうなぁ」
うっとり夢を語るリョウの瞳は、英語のアクセントを覚えるときよりも潤っていた。
シュウも携帯をいじりだし、面白いアプリを散策している。
まじめに学問にはげんでいるのは呼び出されたハルトだけという、おかしな展開になってきている。
これには流石のハルトも絶句した。
「おいお前ら…」
「というか皆で夏休みどっか行こうぜ!」
「いいな賛成だ!外国は無理だがな」
「えー俺はユツキと二人っきりがいいー」
「サガラ…!」
「いちゃつかないでお願いだから。どこ行く?遠出したいな!」
「そういえばここから少しだけ遠いところにレジャー施設ができたらしい。プールとかゲームセンターとか観光スポットもたくさんあるらしい!」
「そんなに、近いところ?もっと、遠くは?」
「よしっ!勉強終わりにして行き先決めよう!リョウ、地図とか借りてきて!」
幸いここは書物の宝庫図書館。観光スポットについての情報を調べるのはたやすいだろう。
「楽しみだなあ早く夏休みならないかなぁ。なあハルトはどこがいい?」
無邪気に問いかけられた言葉に、ハルトの何かがキレた。
「いい加減にしろ!」
「ええっ!?」
突然怒り出したハルトに戸惑いの視線が集まった。
眠りかけていたサガラも飛び起きる怒りようだ。
「俺は何のためにここにいると思ってる。勉強しないなら帰らせてもらうぞ」
荒い手つきで荷物をまとめるハルトを慌ててシュウはとめる。
「ちょっちょっとまって!ごめんって!真面目にするから帰らないで!」
「もういい。一人でやる…ひとつ言っておいてやる」
ぎろりと憤怒がちらつく双眸でシュウを見据え、呪いの言葉を叩きつけるべく、史上最高レベルの低温を絞り出した。
「このままだったら赤点で夏休み潰れるぞ。もう俺は助けてやらん。一度懲りておけ」
「えっハルト!お願い待って!俺を見捨てないでー!」
すがりつくシュウを振り払い、地面を強く踏みつけどすどす帰って行ってしまったハルトの後を、シュウは涙目で追いかけた。
ハルトの呪いの効力は、見事に発揮され、シュウは夏休み補習に強制参加となってしまい旅行計画はなくなってしまったという。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 106