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無自覚侮辱メーカー
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一時限目の笠木の現代国語が終われば、数学という容赦ない予定が詰められているが、さすがに10分間の休憩はある。
すっかり怒ってしまった笠木の授業は私情に促されない馬鹿にも分かる簡単なものだったが、その馬鹿の度合いを超えている二人にすれば頭を悩ませるだけで内容が全く入ってこなかった。
ふぅと疲れた肩を揉みほぐし、数学の準備をするシュウ。疲れたがここでギブアップするわけにはいかない。
二人しかいない教室は空しいほど閑散としている。会話などがなく、更に静寂さが磨きかかっていた。
シュウは恐る恐る右隣のヒナトのほうを窺う。
不貞腐れた表情で頬杖をついていた。
話しかけるんじゃねえ、とオーラが突き刺さるが無言で貴重な休み時間を終えるという選択肢は避けたかった。
「あっあのヒナト?」
「ああ?なんだよアホチビ」
仏頂面ながらも一応返事をしてくれた。
少し肩の力が抜けたシュウはホッとしながら話題のタネを探す。
「ヒナトって俺なみの馬鹿だったんだな。なんか親近感を感じる!」
「喧嘩売ってんのか!」
一気に怒りだすヒナトに、シュウは驚いて椅子から滑り落ちそうになる。
「俺は馬鹿なんじゃねえ。ただ勉強しなかっただけだ。やりゃできるんだよ」
目をきりりっと吊り上げて分かりやすく憤怒の感情を表しヒナトは吐き捨てた。
「ええ…だったらやればよかったんじゃ」
「うっせぇ。いつもリョウが教えてくれるんだが、なんか用事があったらしくてよ」
そんでこのざまだ。どこかさみしそうに呟くヒナト。
シュウもヒナトの悲しみにつられ思わず目を伏せてしまう。
しんみりした空気が漂う室内を和らげようと、シュウはわざとらしい笑みを浮かべる。
「まっまあその、どうせヒナトはアホなんだからリョウがいなくても赤点取ってたよ!」
「よし表でろ。その喧嘩買ってやんよ」
「ちょっだからなんで怒るんだ!首しまってるしまってる!」
襟首を力強く締め上げてくるヒナト。
目が血走っていて、彼が本気でシュウを締め上げようとしているのは明確な殺意となり周囲に散らばった。
こっ殺される!
生存的な恐怖を覚え震えるシュウに、教師という救世主が舞い降りる、
「よーし授業始めるぞ…おっお前ら喧嘩なんてすんな!」
「あぁ!?やんのかてめぇ!」
「ヒナトそれはまずいってマジでまずいって!」
見境なく殴りかかろうとするヒナトをシュウは必死に抑えた。
教師を殴ってしまえば罰は免れないだろうから、自分が起こしてしまった憤怒のせいでヒナトが謹慎になるのは避けたい。
「なんで桜木が凶暴化してるんだ!?」
「ちょっと興奮してるだけだから大丈夫です!早く授業始めてください!」
真剣に勉強しておけばよかった。
何度もそう後悔したがここにきて一段と強くそう悔やんだシュウだった。
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