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心配掛けたくない
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外に出た一同は、突如現れた部外者をどう処理するか悩んだ。
サガラとユツキはすぐに人を馬鹿にするヒナトが苦手だが、共に試合観戦をするのは嫌ではなかった。
だが問題はハルトだ。もう隠そうともしない邪魔者オーラをふつふつと放っている。
ヒナトもその敵意を感じ取っているのか、無言でハルトをにらみ返している。
この重たい空気をどうにかすべく、勇気を振り絞ったサガラが口を開くと、シュウが意外と親しげな口調でヒナトに話しかけた。
「そんでさーあんな見栄はって大丈夫なの追試」
「大丈夫なわけねえだろうが!」
何故かキレながら怒鳴られ、シュウは困った顔をする。
「なら素直に教えてもらったらよかったのに…後で教えてって頼んでみなって」
「んなださいことできるかよ。もう俺一人でやる」
「何を意地になってるんだか…アホが一人で勉強したところで成績があがるか。これだからプライドだけ高い馬鹿は救えないな」
悪意しかない嘲笑に、ヒナトは威嚇するように歯をむき出した。
「うるせえ!誰もてめぇに言ってねえだろうが黙ってろ!」
「おお怖い怖い。言い返せなくなったらどんな状況にでも使える単語を連発する屑が」
「もう喧嘩すんなって二人とも!」
終わらない応酬にくたびれたシュウがにじり寄って殴りかかりそうな双方を押しのけた。怖がりのシュウらしくない行動に、サガラは思わず「おっ」と驚いたような声を上げる。
「というかなんでお前がサッカーの試合に出てない?確かサッカー部だっただろうが」
「あぁ?…それはだな」
「赤点補習の生徒は、部活等などの、試合には、出られない」
言い淀むヒナトに助け舟をたしたユツキに、サガラが飛びつく。
「おおさすがユツキ!よく知ってるなそんなこと!」
「夏休みの、しおりにのってた」
「となると、お前は副キャプテンであるくせに馬鹿だから試合に出れず、リョウに多大な迷惑をかけているということなのか。果てしない屑だな」
「わかってんだよんなことは!」
ハルトの皮肉に、ヒナトは悪態で返さなかった。ハルトも珍しくきょとんとしている。
「だから今度の追試にはぜってぇ受かってもう心配かけねえようにするって決めたんだよ!またあいつとサッカーできるように」
「ヒナト…」
ヒナトの本音が聞けたシュウは、感動したようにぷるぷる震えた。それと相対してハルトの反応は冷たい。
「志すのは立派だが、それを成す方法を見つけていなければただの宣言にすぎない、せいぜい頑張るんだな馬鹿なりに」
面倒臭くなってきたハルトがヒナトに全部投げ渡そうとしたとき、シュウの衝撃的な一言が場を凍りつかせた。
「よしヒナト!一緒に勉強しよう!」
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