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慶太の恋(番外編)
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イケメン、ゲ○。
悠斗が呼ぶ、慶太の通称。
最初のイメージこそ最悪だったが、今二人は友達。
なんなら、近頃は慶太も、隼斗よりも悠斗と会う方が増えた位。
「………………………………花?」
日曜日の今日。
朝、悠斗のスマホが鳴った。
相手は、慶太。
『新メニューが出来たから、試食して欲しいんだけど……………美味かったら、親父に出してみたいから』
慶太の実家は洋食屋で、今修行中の慶太は、たまに新メニューを考えては悠斗や隼斗に試食を頼む。
勿論、悠斗は快く快諾した。
慶太には、色々助けてもらったし、慶太の力になってやりたいから。
あ、あと、単純に慶太のご飯が美味いのもある。
でも今日は、いつもと少し違った。
美味い飯と一緒に、花が届いた。
花が。
「え………………………と、俺、誕生日まだだけど?」
可愛らしい、花束。
ピンクのガーベラと白いチューリップ、小さなかすみそう……………………………女子!?
玄関のドアを開けた悠斗は、その花束に固まった。
どうした、慶太。
「ああ………………いや、来る途中に花屋寄ったから」
自分から目を逸らし、やや赤い顔で慶太は答える。
「は………………………」
わかりやすっ。
悠斗は、一目で悟った。
ははぁん…………………好きな人がいるな、花屋に。
隼斗に惚れてた話からこっち、慶太が誰かを好きになったなんて、聞いた事がない。
何だか、こっちまで嬉しくなる。
「何処の花屋……………………!?」
照れる慶太の腕を掴み、悠斗は迫る。
何か、力になれないかな?
そんな想いが、湧き起こった。
「なっ…………………な、な、何だよ、悠斗っ」
突然の悠斗の問いかけに、慶太は激しく動揺する。
普段は、しっかり者の慶太のこの動揺っぷり。
マジだ、コレ。
「俺も、たまには隼斗に花束あげたいから!」
とりあえず、ごもっともな理由を見繕う。
「ゆ……………………悠斗…………………」
隼斗に花束を。
それを言われたら、嫌だとは断れない。
慶太はしばらく黙り込んで、小さく頷いた。
ヤッター。
そう思ったけど、ちょっと緊張してるっぽい慶太の表情を見たら、悠斗の胸はチクリと痛んだ。
大切な場所なんだ…………………。
慶太は、大切に大切に、花屋に通ってる。
それが、凄く伝わった。
「慶太くんっ!いらっしゃい!」
花屋って、冬でも花があるんだな。
当たり前だけど、そんな沢山の花や植物に囲まれた店先に、その人はいた。
「こ、こんにちは…………………青木さん」
隣にいるだけで、悠斗にもドキドキが伝わってきそうな、慶太の声。
うわぁー、うわぁー、うわぁー。
悠斗は白々しく店内を見渡しながら、心の中で叫ぶ。
見てはいけないものを、見ちゃった感じ。
男子が花屋ってのも緊張するが、そこに慶太は頑張って通っていたんだと思うと、益々緊張する。
「慶太くん、今日は友達も一緒?」
そう言って、自分をにこやかに見つめる、青木さんとか言う男性。
「あ……………………こんにちは」
悠斗は、やや照れ臭そうに頭を下げた。
この人が、慶太の好きな人………………?
涼以来に見る、爽やかさ。
焦げ茶のシンプルなエプロンが似合って、イケメンとは言わないが、とにかく笑顔が良かった。
ああ、きっと誰にでも好かれるんだろうな…………て思わされるような、青木さん。
見た目はチャラそうに見えるけど、仲間想いで優しい慶太が惹かれるのが、わかる。
「青木さん、今日はこいつが兄貴に花をプレゼントしたいらしいんだ」
花屋の雰囲気と、青木さんの爽やかさに飲まれる悠斗の横で、慶太は真面目に話を進める。
こう言うとこ、律儀だよな。
悠斗は口に手を当て、ちょっとクスリ。
「えー、お兄さんに!?素敵だね♪よぉーし、頑張っちゃおう!!」
その上、青木さんも真面目。
「……………………スゴい、ピッタリじゃん」
慶太と。
自分のお願いした予算と相談しながら、色んな花をチョイスしていく青木さんを眺め、悠斗は相性の良さを確信した。
でも、気付いてしまった。
「あれ…………………………」
青木さんの薬指に、光るもの。
嘘だろ…………………………。
「俺…………………てっきり………………」
フリーだと。
慶太、知ってるのかな?
花束を作る青木さんから目を逸らし、悠斗は動揺を誤魔化す様に、近くにあったサボテンを手に取った。
「普段からしているなら、わかるよな……………」
馬鹿だ、俺。
勝手にノリノリになって、勝手に気まずくなってる。
「…………………………ラブリング」
「慶…………………………」
「彼女いるんだ…………………青木さん」
興味もないサボテン越しに見える、慶太の姿。
驚く悠斗に向かって、慶太は苦笑していた。
バレてた……………………!!
「ごめん……………………慶太っ、俺……………」
「気にすんな。俺達みたいな人種が、ノンケを好きになったら、こんなもんだよ」
「え…………………………」
俺達みたいな人種。
所謂、ゲ○。
「100人好きになったって、両想いなんてなれない事の方が普通………………………それでも、好きになっちゃうんだから、マジ馬鹿」
それを言う慶太の瞳は、哀しそうに青木さんを見る。
慶太………………………。
悠斗は、耐えきれず目を伏せた。
ごめん、ごめん。
慶太の苦しさを、自分がえぐり出した様だ。
「一ヶ月前かな…………………新作メニューを、親父に滅茶苦茶貶されてさ…………………思い切り落ち込んでた時に、青木さんの店の前を通ったんだ」
『お兄さん、この花持って行かない?』
いきなり手渡されたのは、色とりどりのガーベラ。
『はい?な、何ですか…………………急に』
人が滅入ってる時に、何だよ。
苛ついた俺は、ぶっきらぼうに返した。
なのに、青木さんは笑顔で花束を握らせる。
『ガーベラって、可愛いよね。空に向かって、目一杯首を伸ばして顔を上げてさ……………見る人を、笑顔にしてくれるんだよ?向日葵みたいに大きくはないけど、頑張って花を広げて、見る人を笑顔に』
『………………………女じゃあるまいし』
『女じゃなくても、君には似合うよ。格好いいもの!』
その力説に、キュウと胸が締め付けられそうになった時、まさかな発言が全てを台無しにする。
『………………………て、実はコレ、予約された花束が突然キャンセルされちゃって…………………』
『な………………………………』
申し訳なさそうな青木さんの笑顔と、行き場の無くなったガーベラ達。
『ごめーん………………………君が、あまりに下向いて歩いてたから、ついあげたくなっちゃった』
何だ、この人。
第一印象は、変な奴。
「……………………何、それ」
唖然。
変わってる。
慶太の話に、悠斗は目が点。
「変わってるだろ?でも、それが忘れられなくなった……………………また会いたいなって、なるんだよ」
「…………………………慶太」
「2回目で、早くも彼女とバッティングしちまったけど、不思議とショックはなかったかな。そんなもんだろって、諦めてたから……………………こうして、会えるだけでいいんだって思ってる」
それは、違う。
可能性は低いかもしれないけれど、恋をしたら、微かな望み位は抱く筈だ。
目を合わせたい。
話をしたい。
身体に、触れてみたい。
微かな望み。
だって現に、慶太の眼差しは、今もとても熱い。
「うん……………………うん、そうだね」
だけど、そこは言えなかった。
慶太が、それで我慢しているから。
「慶太…………………いい花屋を、ありがとう」
「おう………………………!」
慶太は、やっぱり大人だ。
俺の図々しさを、優しく受け入れてくれた。
俺は、決めた。
いつか、いつか必ず慶太に素敵な恋人が出来る事を、毎日願おう。
そして、周りが引く位、盛大に祝ってやるんだ。
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