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波の音
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ザザァァァァ…………………ン
波の音だけが、二人を包む。
「…………………隼斗…………………」
人に見られたら……………………そんな台詞は、頭から飛んでいた。
それくらい、優しいキスだった。
「……………………酷い兄貴だな……………………中一で、弟への愛に目覚めた兄貴は、堕落の一途を辿る」
僅かに離れた唇から、隼斗は哀しい表情でそれを言った。
堕落の一途。
悠斗を愛しすぎて、周りが見えなくなった。
「父さん達が亡くなった時、俺はホッとしたんだ。これでやっと、我慢しなくていいんだって…………」
欲しくて欲しくてたまらなかった、悠斗。
優等生で、期待ばかりかけられてきた兄は、愛する弟を前にして、暴走する。
「……………………俺にとっては、地獄だったよ」
悠斗の脳裏に過る、これまでの苦痛な隼斗との日常。
実の兄に、ある日突然キスをされ、ある日突然強姦された。
隼斗の異常な愛は、悠斗の身体を食い尽くす。
好きって言ってくれてたら、何か変わっただろうか?
「お前が……………………欲しかった……………」
悠斗の首筋へ顔を埋め、隼斗は今にも消えそうな声で、そう呟いた。
「許してもらえない事は、わかってる……………」
お互いの手を握り合い、二人の影は一つに伸びていく。
毎日々弟を欲した兄と、毎日々兄に抱かれた弟。
それでも、一緒にいる。
「…………………隼斗………………兄弟って、何だろう……」
悠斗は、隼斗の背中へ腕を回し、訊ねる。
「ごめんね…………………悠斗……………………」
波が砂浜へ打ち付けるように、隼斗の『ごめん』も何度も繰り返された。
ごめんね。
何故だか、涙が自然と溢れてた。
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