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18歳以上ですか?
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ナンパ
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いえ、違います。
でもそれくらい、俺には刺激的な出会いとなった。
「あぁ…………………頭、痛ぇ………………」
謎の関西人に、俺はアッサリ負けたよう。
身体も心もズタボロな俺にとって、何だかやたらとオーラが強い関西人は、とても眩しく見えた。
全く何者かは知らないが、こんな人だったら人生上手くやってけるんだろうなーて、痛む頭を押さえ、考える。
とにかく、一目で『羨ましい人』に感じた。
「ちょっ………………兄ちゃんっ!気分悪いんか?先生呼んだろうか?……………とりあえず、横になりやっ」
でも、そんな俺の思いを知るよしもない関西人は、滅茶苦茶慌てて俺の身体を支えてくれた。
当たり前だよな。
目の前で、いきなりガキんちょが、苦しそうにうずくまるんだから。
俺って、どんだけ迷惑な奴。
もう、泣けて泣けて仕方がないよ。
「す、すみません………………少し横になったら大丈夫ですから…………………」
「いや……………でも身体熱いで………………無理したらあかんよ」
しかも、優しい。
くそ……………いい男って、どこまでも、イケてる。
たかだか18歳のちっぽけな男子は、劣等感。
「何か、冷たいもん買うて来たるわ。待っとき」
俺の顔を男らしい手で触れ、その関西人は、またとびきり男前な笑顔を惜し気もなくさらしてく。
………………………はい。
そう、甘えたくなりそうな、頼もしさ。
今の俺に、この頼もしさは、ヤバい。
「そんな…………ホントに気にしないで下さい………」
それでも、見ず知らずの男性を前に、俺は一線を引こうと試みる。
これ以上、人様に迷惑はかけられない。
「何言うとんや……………そないな弱った顔して。こう言う時は、遠慮のう人に甘えとくもんやで。無駄に頑張っとる方が、身体に毒や」
マジ、格好いい。
さらっとそんな事を言って、俺の頭を撫でてくる関西人に、俺は何も言えなかった。
本当に、この人は大人なんだと思う。
「はぁぁ………………どうしようもないな、俺………」
待ち合いの椅子に横たわり、俺は溜め息と共に、俺の為に自動販売機に向かう、関西人の背中を見ていた。
180は越えてるよな………………。
肩幅もあって、シンプルな服装でも、様になる。
すれ違うお婆ちゃんまで、振り返ってるよ。
中途半端な俺なんか、足元にも及ばない。
「世の中にはいるんだよ、ああいう完璧な人………」
隼斗も、もう少し大人になったら、あの人に近付くのかな……………………。
それに比べ…………………俺は。
「俺は、どうなっていくんだろう………………結論、出さなきゃ………………だよな…………」
隼斗と、涼。
涼………………話、出来るだろうか?
また、あんな風になったら俺………………。
複雑な想いを絡ませ合い、俺はずっと関西人を眺めながら、未熟な頭を悩ませた。
「あの人なら、どうするんだろ………………その前に、恋に悩む事なんてないよね……………」
そう言えば、大人の人に優しくされるのって、いつ振りだろう。
両親を亡くしてから、俺の大人は隼斗だけだった。
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