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「…………………冷た…………………」
頬に当たる、ペットボトルのひやっこさ。
気持ちいい…………………。
火照る身体には、本当に心地好い。
俺は、身体に染みる冷たさに、心の底から気持ち良さに浸った。
「なんや…………………生き返ったみたいやな」
あ……………………。
忘れてた、今の状況。
椅子に横たわる俺の目の前で、イケてる関西人がしゃがみ込んだまま、俺を笑顔で見つめてる。
しかも、ペットボトルを掴む俺の手の上から、俺がペットボトルを落とさないように手を添えて。
至れり尽くせり………………である。
俺は我に返り、顔を赤くした。
馬鹿か、俺………………………。
「い、いや……………ホントにすみま………」
「何しとん、親父」
…………………………え?
俺の声へ被さる、若い声。
親父……………………!?
「ゲ……………………大和っ」
関西人は、声の主を見上げ、驚いた。
「ゲ…………ちゃうやろ?何や、ソレ……………新手のナンパか」
『親父』と言う単語にもビックリだが、俺は視線を上げて、益々ビックリ。
「……………………は…………………息子さん………?」
この関西人、一体何歳!?
顔を上げた先にいた、一人の少年。
柔らかそうな茶髪にマスクをし、間から覗く瞳は、綺麗な二重の、いかにもイケメンって雰囲気を漂わす。
どう見ても、俺とあまり変わらない。
若々しい関西人と、親子だなんて、何かの冗談?
俺は頭の痛さよりも、その衝撃に唖然としてしまった。
「ア、アホ……………………ナンパ違うわ!この子が体調悪そうやったから、冷たいもん買うて来てあげただけやっ」
「へーぇ………………そら、感心な事やな」
「おま……………信用してへんのか!」
「別に………………ええんちゃう。人助け」
「何かトゲあるしっ」
なに、これ。
ラブラブですか?
イケてる関西人の意外な顔。
年齢不詳な上に、デカい子持ち?+恋人みたいに仲がいい…………………。
だってコレ、息子の言ってるの……………どう見ても、ヤキモチだよな。
「………………………羨ましい」
俺なんか、ラブラブすら遠ざかってるよ。
思わず口から飛び出す、欲求不満。
「はい…………………?」
俺の情けない嘆きに、イケメン親子は見事に反応。
「あ、違………………へ、変な意味では………っ」
俺は焦って手を振ると、ペットボトルを落としながらも、身体を起こした。
そして、急いで身体を起こしたもんだから、付いて来れない頭が、またグラグラと回り出す。
ガタンッ……………………!
「わぁ…………………」
「あかん…………………っ」
前のめりに倒れそうになる俺を、今度は息子が咄嗟に抱き止める。
イケメン親子は、どこまでイケメンなんだ。
「あんた、ホンマ危ないな…………フラフラやないか」
「大和、お前も風邪治りきってないんやから、しんどいやろ?俺が代わったるから、お前退き」
「…………………親父………」
つかさず口をつく、優しい関西人。
何だか、とても幸せそう。
それに引き換え、俺は…………………。
「情けな……………………」
「……………………兄ちゃん?」
顔も上げられず、俯く頬を涙が伝う。
寂しい。
俺を助けてくれた関西人の腕を掴み、俺は再びボロボロの姿をさらした。
名前も何も知らない、赤の他人の前で、ボロボロと。
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