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勇気
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「うわ、あっちぃーっ!!」
ウチのリビングのドアを開け、慶太が叫び声を上げる。
真夏の閉めきった家は、地獄だ。
俺もたまらずフラついて、近くの柱を掴んだ。
「俺……………こんなんで、よく炎天下に座ってたな」
今更だが、自分の無謀さに、呆れ果てる。
急いで、エアコンのスイッチを入れている慶太を見つめながら、今日待ち合いで会った妙な親子の事をボーッと考えていた。
帰りしな、お父さんに言われた。
『一人で頑張らんと、甘える勇気も持ってみ』
甘える。
甘えると言われても、俺には相談出来る友達も、いない。
と言うか、相談出来る様な内容ではないけど。
親友は涼しかいないし、家族も隼斗しかいない。
「俺って、寂しい奴だな…………………」
ろくに人とも関わらないで、俺はそれでいいと思っていた。
何も、変わっていない。
俺は、俺の殻に閉じこもって、毎日を過ごしてたんだ。
隼斗や涼は、自分の世界を持ってどんどん進んでいるのに、高3にもなって進路さえ決めていない。
恋愛とか言う前に、自分が成り立ってないじゃないか。
「悠斗っ………………とりあえず、お粥作っておくから、後で食べろよ?」
意外と?誠実な慶太は、モンモンとする俺を尻目に、キッチンへ入っていく。
そう言えば慶太だって、実家の洋食屋を継ぐ為に、もう何年も修業しているんだっけ。
なんだか、慶太、格好いいな。
ちゃんと夢がある。
「夢か…………………俺、小さい時何になりたかったっけ?」
確か、医者かパイロット。
「……………………ありきたりだな…………」
しかも、忘れてた。
今日の親子は、何やってんのかな?
後から迎えに来た男性も、お父さんを『親父』と呼んでいた。
『親父』って、何。
俺の知らない世界は、まだまだあるんだ。
そんな事を考えながら、俺はいつの間にかソファで寝てしまった。
久々に、ぐっすり眠った気がする。
2時間後、慶太に起こされるまで、俺は微動だにしなかったらしい。
慶太、本当にごめん。
俺も、変わろう。
少しでも、顔を上げられる毎日を送れる様に。
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