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別れ
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涼は、少し痩せて見えた。
サッカーの強豪校で、日本代表のU-18からも声がかかると言われてる涼は、ただでさえ忙しい。
それで痩せたと言えばそれまでだが、俺は、自分のせいだと痛感した。
俺達は薄暗い中、近くの公園のベンチまで、歩いて行った。
前までは、こんな時間帯に二人で歩いていたら、必ず手を繋いでいた。
涼の方から、手を握ってくる。
愛されてるって、その度に思ったものだ。
でも今日は、涼がとても遠かった。
「俺………………イタリアに行くんだ」
涼の、突然の告白。
「え…………………………」
自分の話をしようと思っていた俺は、あまりにも予想外な話題に、言葉を失った。
「来年の春にね………………日本代表で海外遠征に行った時、向こうのクラブチームから声をかけてもらってさ…………………最高のチャンスだから、それに乗ってみようと思って」
唖然とする俺の隣で、涼はやっと出てきた一番星を見ながら、笑顔でそう話した。
イタリアって……………………遠いよな?
とにかく、俺の頭はそんな感じに固まっていた。
「だから、悠斗……………………もう、お前を見てる余裕ないよ…………………」
空に星が出ても、まだまだ昼間の暑さが残る、夏の日。
流れる汗よりも、俺は、涼の横顔に意識が奪われた。
「りょ…………………」
直ぐに、わかったから。
涼は、俺の為に頑張っているんだって。
潤む目を懸命に堪え、俺を諦めようとしてくれている。
「涼……………………俺……………」
さっき、あんなに泣いたのに、頑張ってる涼の姿に、また泣ける。
「行ってくる、イタリアへ…………………俺は、自分の夢を取って、行ってくるから……………だから、お前は、幸せになってな」
幸せに。
「そ、そんなの………………そんなの………」
俺に、そんな資格ない。
俺は、涼の方へ身体を向けたまま、顔を上げる事が出来なかった。
「馬鹿……………………幸せになんなきゃ、許さねえーよ。お前は、俺の初恋の人なんだからな!………………お前が幸せになってるって思えたら、俺もサッカー取って良かったって思えるから」
俯いて、涙を拭う俺の後頭部を撫でながら、涼は必死に声を落ち着かせようとしていた。
「隼斗さんなら、お前を絶対に幸せにしてくれる」
最低な、俺。
こんなに素敵な恋人を、裏切るなんて。
「りょ…………………ごめんね………………ごめんね、涼」
謝っても謝りきれない程、俺は自分の浅はかさに項垂れる。
「ううん…………………謝るのは、俺だよ。この前の事、ずっと謝りたかった………………………好きな奴に手を出すって、最低だ」
いつの間にか、蝉の鳴き声も聞こえなくなった、星空の下。
涼は、最後まで優しかった。
「本当に、ごめんな…………………悠斗」
きっと、一生忘れない。
俺は、幸せだった。
涼に愛されて、幸せだったよ。
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