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赤と白の狭間で①
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黒いワンピースに真珠のネックレス。
僕にしがみつき、涙をこぼす彼女の爪には、いつものような派手なネイルはなかった。代わりに、薬指に光る指輪が目立つ。
「彼の、最後の言葉は何だった……?」
嗚咽交じりに、静かにはっきりと尋られる。
床に彼女の涙がポタポタと落ちていった。
何も答えようとしない僕の腕にさらに力を込められ、爪が食い込む。鈍い痛みをどこか他人事のように感じる。
「彼と、まともに会話したのはッ!貴方が最後なのよ!」
涙でぐちゃぐちゃになった顔。
ーーああ、勝った。
最後の最後に彼女に勝てたが、目に熱いものが込み上げてくる。
彼女は今、悔しそうで、悲しそうで、僕を羨んでる。
いつも俺がしていた顔だ。彼女は今僕になった。
「あなたの名前は出てきませんでしたよ。」
哀しいほどに、残酷に。
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