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喪われた記憶 2
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あの日、スマホの画面に表示された相手は確かに雪夜さんだった。でも、電話越しの相手は雪夜さんじゃなくて。オレは雪夜さんと似た声の人から、雪夜さんが事故にあった事を知らされた。
バイト先のサッカースクールに向かう道中、トラックが大きな事故を起こしたのに巻き込まれたって。
最初は何かのイタズラだと思った。
でも、その人から話を聞くうちに本当の事なんだって分かって。あの日、制服のまま向かった場所は、今オレがいる病院だった。
「やーちゃん……今日も分かんねぇの?」
雪夜さんがいる病室の前。
小さく聞こえてきた声はオレに電話をくれた人……雪夜さんのお兄さん、飛鳥さんの声で。オレは入ろうとした病室の前のスロープを掴んで立ち止まった。
「俺さ、お前に言ったじゃん。守り抜いてみせろって……あんだけ大事にしてた相手忘れるとか、やーちゃんクソガキ過ぎんだろ」
一方的に雪夜さんに話しかける飛鳥さんの声が聞こえるけど、雪夜さんからの返事はないんだろうと思う。あの事故の日から、雪夜さんの家族以外の記憶はなくなってしまったままだから。
命に関わる事故だったわけじゃない。
事故後すぐは意識がはっきりしていなくて、左足の複雑骨折と、巻き込まれた衝撃で頭を強く打ったって聞かされていたけど。
外傷の回復は悪くないんだ。
ただ……事故のショックからか、雪夜さんの喪われた記憶の中にオレがいるってだけで。
「ったく、あんな純粋なヤツ初めて見たってのに。いつまで泣かせるつもりでいんだよ」
記憶がなくなる前に雪夜さんが飛鳥さんに、どんな事を話していたのかは知らないけど。事故があったあの日、オレに連絡をくれた飛鳥さんは雪夜さんのスマホのデータを見て、オレが雪夜さんの大切な人だってすぐに気がついたらしく、見ず知らずのオレにわざわざ連絡してくれた。
あの時は男同士とか、色々考える前に体が先に動いて。病院まで駆けつけたオレは、初めて会った飛鳥さんに肩を抱かれて泣いていた。
ちゃんとやーちゃんの意識が戻ったら、俺はあのクソガキに殴られるなって。そんな事を呟きつつ、オレの傍にいてくれた飛鳥さんだったけど。
雪夜さんの意識が戻った後。
オレを見て「誰?」って言った雪夜さんの姿を見て、飛鳥さんは全てを悟ったような顔をしてオレに笑いかけて言ったんだ。
『お前は今日から俺の奴隷な。拒否権ねぇから、毎日このクソガキに会いに来い』って。
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