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ドナドナな俺
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いつの間にか寝ていたらしく、気がつくとソファーの上に寝かされていた。串崎という男もいないし、逃げるなら今かもしれない。
逃げられる、か?
足は撃たれていて、普通には走れはしないだろう。
逃げて捕まったら、今度は確実に殺される。恐怖とかじゃなく、事実だ。
あと250万と決まった金額で自由になれるなら、そっちを選んだ方がいいに決まっている。ケツの穴ほじられるくらい、仕方ねー話だろ。
「あら、起きてたの。静かだからわからなかったわ。これから売られるってのにおとなしいわね。名前、教えてくれる?」
串崎がビール片手に俺に近づいてくる。シャワーを浴びたばかりなのか、半裸で髪も濡れている。
「ハルカ。今更暴れても仕方がねェし」
「ハルカね。さっき、トラさんから連絡きて、売り先決まったらしいわよ」
「そう、か」
喧嘩で負けた男のケツとか、皆で回して楽しんだこともある。脅してヤッたこともある。
自分だけがその対象じゃねーとか、ムシがいいだろ。
「ハルカ、アンタ無気力すぎない?いいの?」
「よかねーけど、殺されるよかマシだろ」
「買ったのが誰とか気にならないの?」
「額しか気になんねーよ」
ちらと串崎をみあげると、飲みかけのビールを手渡してくる。
「まあ、SM行為OKで売ったからね。そっちの世界でも有名なひとよ。気に入られたらお金は稼げると思うわ」
くすりと笑い、棚から赤い首輪をとると俺の首に嵌める。
「マゾに目覚めちゃったら、責任はとってあげるわよ。安心しなさい」
俺は缶に唇をつけてこくんと飲み込む。
苦いだけの液体で美味しくはない。
ビールってこんな味だったかね。
「逃げてもさ、帰るとこも行くとこもねーんだよ。金返したとしても、俺にはなんもねーからさ」
「悲しくなることは言うものじゃないわ。でも、そういう弱い子は嫌いじゃないわね」
串崎は、そういうと俺のシャツを手渡す。
「最初が汚い豚オヤジじゃなくてよかったわよ。アナタの相手はまあまあ若い方。歳は30くらいかしら、SM趣味がなければねイィ男なんだけど」
「調教師が何言ってんだか。こんなキタネー男にカネ払うなら、SでもMでもしてやんよ」
ハゲ散らかしたオヤジに掘られることを覚悟してたが、そうでもないようだ。
容姿なんか関係ねーけど。
「まあ、男らしい。トラさんも、自分のとこの兵隊にすればよかったのにねぇ。じゃあ、車をまわしてくるから着替えてなさい」
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