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リンちゃんとは、察しの通り、例の女子大生風のコの事だ。
つーか、名前まで知ってんのかよ!?
客の名前、チェックしたの、僕だけだって言ったじゃん!?
って、いつも、心の中では怒鳴れるのに、なんで口に出せないのだろう。
「これは、流石に自惚れてるかなぁって思ったけど、もしかして、ひー君、リンちゃんに嫉妬したのかな?って…」
言われてみれば、それが一番大きいのだと思う。
もちろん、嫉妬だけじゃなく、なんであんな可愛いコじゃなく、僕なんだよって信じられない気持ちが焦りになっていたのだろうけど…
でも、ここで認めるのは、とにかく癪だった。
コジマさんはまだ顔を上げないけれど、背中越しでもわかる。
絶対、相当ニヤけている。
「はっ!?なんで、嫉妬なんか!!」
「いや、だって、あの子絶対、俺の事好きじゃん?それは、ひー君も気付いてたんじゃないの?」
「それこそ、自惚れじゃね?」
「じっと見てたくせに…」
「……!?」
「俺が告る前から、リンちゃんとの事、なんか気にしてたもんね。」
「そうだよ!だって、可愛いじゃん、あの子…」
「えっ!?ちょっ、ひー君こそリンちゃん好きなの!?」
「違うよ!!なんで、あんな可愛いコじゃなく、よりによって男、しかも僕なんだよって思ったの!!」
あ…流れで、つい言っちゃった。
言えちゃった…?
そこで、コジマさんの拘束はやっと解けた。
自分の言葉に唖然とする僕は、中々動き出さずにいた。
ふいにコジマさんが、僕の肩にそっと手をかけて、自分の方へと向かせる
こんな時は、ニヤけ顔をしているとは、もう思わない。
たった二日間だけど、急速に距離を縮めて、そこはわかった。
こんな時に、するのは、妙に真剣な顔だ。
僕も、黙ってその目を見つめ返した。
「これで、少しはわかってくれた?俺の気持ち…」
「どういう事?」
「昨日、なんとかって奴の事、打ち明けてくれた時、俺、同じこと思ってた。そいつじゃなくて、なんで俺なの?って…」
「でも、あいつは…」
「うん。ひー君の中では終わってるのかも知れないけど、じゃあ、そいつの中ではどうかな?」
「あいつ…の中?」
「そう…
多分、途中で反論したくなると思うけど、少しだけ黙って聞いててくれる?
これは、飽くまで俺の気持ちだから。」
「……わかった。」
「あの話聞いてさ、ひー君もそいつの事、好きだったんじゃんって、俺、思った訳。
——おっと、ストップ!まだまだ、冒頭だよ。飽くまで、俺の感想だってば!もうちょっと頑張って。
—だからこそ、あんな事されて、悲しくて逃げたんじゃないかって…
でも、もし、そいつがそんな事しないで、きちんと気持ちを伝えてたら、どうなってた?
多分、俺の入る余地ないよね?」
「あ…」
それは、僕も思った事だ。
思わず声が出てしまい、慌てて口をつぐむ。
そんな僕に気付きながらも、コジマさんは、ただ横目で見ただけでそこは指摘しなかった。
静かに話を進める。
「実際に、最初はあいつの代わりだったとか、あいつが俺に似てるとか言ってたじゃん。
それって、どれだけ酷い事言ってるかわかる?
俺の好きって言葉——気持ちを、真剣に受けとめられないから、そんな事、平気で言えるんだろうね。」
その通りだ。
今なら、わかる。
やっぱり、好きとか言われても、どこか信じられなかった。
話をする時、こんな事言ったら、傷つくかな?とか、一つも考えていなかった。
そりゃ、キレて当然だよね。
僕は、重々しく頷いた。
涙が出てきた。
このタイミングで泣くなんて、またあざといとか思われるのだろうな。
今更だけど、話をする時も、コジマさんを好きだとか思った時も、指摘通り相手の気持ちなんか考えず自己陶酔していたのだと気付けた。
自分が可愛くて大好きで、自分の事しか考えられない、自己陶酔ヤローで間違いない。
「ごめんなさい…」
こんな言葉じゃ足りないって、わかってるけど、これしか言えなかった。
コジマさんは、そっと僕の体をズラし、自ら足を外して僕の横に移動する。
隣に並んで腰を掛けたのだから、然程距離は変わらないのに、強い不安に襲われた。
それでも、ここで自分から体を寄せる資格は、今の僕にはない。
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