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「あっ…」
鮮明に蘇って来た記憶に声を上げると、奴は満足そうに頷いた。
「やっと、思い出した?」
「うん。カード作った。」
「そうそう。その時。」
「そっか。それで、名前知ってんのか?」
「おうよ。実は電話番号とかも知ってる。」
「マジか!?」
「いや、嘘。そーゆー個人情報は、俺らはバイトが簡単に照会できるもんでもないし。」
「なんだよ。じゃあ、申込書盗み見たのかよ。」
「チゲーし。他のお客さんの時は見たりしねーよ。一人で相手する初めてのお客さんだったしその前の笑顔で俺、かなりやられてたから、お前の時だけ。」
冗談とわかっていても、話がそう言う方向へいくとつい気が引けてしまう。
「また、んな事言って…」
僕は目をそらした。
「マジだから。」
ワントーン低くなった声に、ドキリとしながら僕は横目で奴を見た。
ニヤけ顔は相変わらずだ。
「マジに見えねーよ。」
この前の様にムキにならないように気をつけながら、いつも通り受け流す様な調子で言ったつもりだったが、返って来たのはブハッと言ういつもの吹き出しではなかった。
「これから、マジで言うよ。」
その言葉に僕は返す言葉がわからなくなった。
床に視線を落とす。
調度、店内に流れる音楽の切れ目なのか、居心地の悪い沈黙があった。
それは、ほんの一瞬だったと思う。
奴がゆっくりと口を開いた。
「ひー君は覚えてないと思うけど…その時、俺、色々話しかけた訳。珍しい字ですねとか…俺の三つ下ですね。とか…
それに対して、逐一、はいとか、そうなんですか?とか、答える姿が可愛くて…
んで、書き終わった後に、お前が言ったんだよね。
『これから、よろしくお願いします!』って、満面の笑みで…」
もう、完全に思い出した。
言った。確かに、そう言った。
今まで抑えていた反動か、きっと、僕は耳まで紅くなっているだろう。
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