アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
*11*
-
どのくらいそうしてたのだろう。
「ヒサシ!」
前方からの声に、僕は反射的に顔を上げた。
誰の声かはすぐにわかった。
逃げ出したくもなったけれど、暫く立ち止まっていたせいか、地面に根をはった様に足は動かなかった。
「コジマさん…」
ポツリと呟いて、そう言えば、まだ下の名前も知らないのだったということに気付いた。
また熱が出てしまったのか、僕はぼんやりとしながら奴がこちらへ駆け寄って来るのを見ていた。
奴の目は僕をまっすぐと見据え、信号も確認せず道路へ飛び出した。
「あぶねっ!」と思った瞬間、僕は一歩踏み出す。
どうやら足が動かなくなった訳ではないらしい。
って、当たり前か…
今ならまだ、奴との距離はある。
走って逃げれば、店番もあるのだろうから執拗に追いかけては来ないだろう。
でも、僕は、もう一歩前へと踏み出した。
間も無く距離が完全に詰められると言うその時、眩い光が僕らを包んだ。
車のヘッドライトだ。
猫は車のヘッドライトに驚いて思わず立ち止まってしまうからよく轢かれてしまうらしい。
そんな下らない雑学が頭を過った。
こんな時に過るのは走馬灯じゃない。
いや、走馬灯は跳ね飛ばされた瞬間とかに浮かぶのだろうか?
「おいっ。」
ハッと顔を上げた。
そこには奴が不思議そうな顔をして立っていた。
「あれ?車は?」
てっきり跳ねられると思った僕は、多分間抜けヅラでキョロキョロと辺りを見渡した。
突然、手をギュッと握られる。
状況が飲み込めずに、ぼんやりしていると、奴が痺れを切らして口を開いた。
「信号変わっちゃうぞ。早く。」
手を引かれ、コンビニの方へと連れていかれる僕。
まだぼんやりする頭で前方でを見ると、奴の言葉通り、歩行者用の青信号がチカチカと点滅しているのが見えた。
もちろん車は停止線できちんと停まっている。
僕はなんて間抜けなんだろう。
そう思うと、さっきまで悩んでたことや、あの事も僕の考えすぎが事態を悪化させていたのではとも思えてきた。
実際そうなのだろう…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
11 / 119