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一年前から張り詰めていた物がプチんと切れた音がした。
オロオロする奴を前に、申し訳ないと言う気持ちがあったが、涙は止まらなかった。
「なんだよ…皆して…僕は普通にしているつもりなのに…それでも、すれ違って行くのはなんでなんだよ…」
涙と共に零れた言葉はそれ以上続かなかった。
普段からこの時間はお客さんが居ないことはわかっている。
それでも、今日ほど客入りがないことをありがたいと思ったことはなかった。
暫く僕はしゃくり上げながら泣いた。
こんなに泣いたのはいつ振りだろうか?
もう思い出せないくらい昔の様な気がする。
「大丈夫か?」
少し涙が収まったころ、静かに僕を見守っていただろう奴がポンと僕の肩を抱くように包む。
その手に促されながら、僕はスタッフルームの様な所に連れて行かれた。
もしかしたら二畳もないかも知れないと思うくらい狭く物が散らかりまくっている部屋の中央にあるパイプ椅子に僕は座らされる。
顔を上げて、奴を見たが、サッと視線をそらされた。
「ちょっと待っててくれな。」
そう言うと、奴は踵を返し店内へと戻っていった。
そりゃ、きまり悪いよな…と思えるくらい、僕は冷静さを取り戻していたと思う。
扉を閉められた瞬間、店内から流れ込んできていた有線が途絶え、静寂がむしろ耳にうるさいくらいに感じていた。
頭はさっき以上にぼんやりしている。
これは、完全にぶり返してしまったな…と思った。
それならば、店内でスポーツ飲料や簡単に食べれる物をレジをしめてしまう前に買っておかなければ…とも思ったが、体が重くて動かない。
定まらない焦点で、室内を見回すと、時計が目に入った。
閉店時刻である二時を三十分以上過ぎていた。
僕は、どのくらい泣いてたのだろう。
それ以前に、あの横断歩道にどのくらい立ち尽くしていたのだろう。
こんな時間まで、奴は待っていてくれたんだな…
ぼんやりして頭が回らないはずなのに、色々な事が流れて来てとまらなかった。
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