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ジンジンとまだ痺れる頭を抱えながら、やっと顔を上げると、奴が驚いた顔をしてドアに手を掛けたまま呆然としていた。
僕と目が合うと、ブハっと吹き出していつものように笑う。
その笑顔に少しホッとしてしまう自分に悔しさを感じた。
「何やってんだよ?」
言いながら、室内に侵入してくる奴。
僕は大きい方だとは決していえないが、それでも男が二人収まるととても狭い。
普段から奴は体や顔を寄せてくる事が少なくなかった。
店内だと、「近っ」と思っても、然程意識する事がなかったが、やむ終えない事とは言えこんなに至近距離に居る奴を見ると変な意識をしてしまうのは、いつもと場所が違うからだろうか?
奴の方は、まったく気にする様子もなくYシャツのボタンに手をかけた。
「着替えるなら出て行こうか?」
さりげなく席をはずそうとしたが、奴はそれを制止した。
「いや、もう店も閉めちゃったし、一緒にいないとまずいと思う。すぐ終わるから、そこに座ってて。」
また視線を合わせずにそう言うと、奴がボタンをひとつひとつはずし始めた。
男同士なんだから、そんなに気を使う必要なんかないのに、僕は視線の置き場に困り床のシミを仕切りに追っていた。
「あ、そう言えば…」
まるで独り言の様に、奴がポツリをつぶやいた。
「なに!?」
自分でも過剰だと思う程、大声を上げながら僕は顔を上げた。
「ん。」
唸るみたいな声を上げて、鼻先に突き出されたのは少しポップな僕のパスケースだった。
「あ…ありがとう。」
僕は遠慮がちにパスケースを受け取った。
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