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雪の降る季節 02
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「これで二学期終業式を終わります。」
その声と共に終わったー!と言う大きな声と楽しそうな話し声が聞こえる。
「今から職員会議があるので、部活動生は部活に、部活に入ってない生徒は速やかに下校しなさい!」
マイクを持った先生のそんな声も聞こえた。
そして、俺はというと…
「えっと…先輩?」
「…何?」
「いや、”何?”じゃなくて…その…手離してほしいんだけど…。」
武藤と並んで教室に戻ろうと体育館から出ようとしているところを見つけて、制服の袖をぎゅっと掴んで。
行くなとでも訴えるように、強く握り締めた袖を離さなかった。
「…なんで?」
「なんでって…。てか、何かあったの?」
何かあったのって…
あったのはおまえのほうだろ!
なんでそんなにケロッとしてんだよ!
「何かあったのはおまえだろ…」
「え?」
「だから!!何かあったのはおまえのほうだろ!!なんで俺に何も言わねーんだよ!!」
「せ、先輩!?」
「一人で抱え込んでんじゃねーよ!!これは俺らの問題だろ!?」
「ちょ、先輩!!落ち着いて!!」
「落ち着いてられるかよ!!」
「い、いいから!!そんな大きな声出さないで!!」
「うっせーな!!全部おまえのせいだろ!!」
「わ、わかった!!わかったから、場所変えよ?ね?ほら、行くよ!」
「ちょ、篠原!」
「ごめん、健。」
そう武藤に言って。
武藤もわかった、って言って教室に戻っていった。
そして、俺はお馴染みの空き教室に連れて行かれた。
「で、何があったんですか?」
「……。」
「黙っててもわかんないんですけど。」
篠原は机の上、俺は篠原が座ってる机の隣の椅子と、いつもの定位置に座って。
篠原は俺を見ながら聞いてくる。
でも、俺はというと、俯いて何も話さない。
ずっと黙ったまま。
「先輩。」
「……。」
「俺らの問題って何?」
「……。」
「俺何かした?」
「……。」
何かしたってわけじゃないし…
ただの俺の八つ当たりっていうか、俺が1人でイライラしているだけで…
今、冷静に考えれば、篠原は全然悪くないんだよな…
「先輩、ちゃんと話して。」
「……。」
「体育祭のときみたいになりたくないんだ。」
「っ…」
「先輩もそうでしょ?」
確かに…
あんな思いはもうごめんだ。
でも、何て言えばいい?
篠原は何も悪くないのに、責めるような言葉しか頭に浮かんでこない。
「体育祭のときに思ったんだけどさ、俺たちって言葉足らずだと思うんだ。」
「……。」
「もっとちゃんの話し合ってれば、あんなことならなかったんじゃないかなって思うんだよね。」
「っ…」
「だから、これからはちゃんと言って欲しい。俺もちゃんと言いたいことあったら言うから。先輩も溜め込まないで、ちゃんと言って?」
「…じゃあ、おまえも苦しいって言えよ…。」
「え…?」
篠原の言葉に確かにそうだ、と納得させられた。
確かに俺たちは言葉足らずだ。
お互いに迷惑かけたくないだとか、心配かけたくないだとか。
そんな想いがあって、ずっと溜め込んで黙ってた。
でも、体育祭の件でその想いが余計お互いに心配させるんだってことに気づいた。
だから、篠原に言われてちゃんと言わなきゃって思ったのかもしれない。
あんなに言うか言わないか悩んでいたのに、篠原の言葉で俺が言いたかった言葉はあっさりと口から出てきた。
「孝太から聞いた。おまえ、生徒たちからいろいろ言われてんだろ?」
「いろいろって…?」
「別れろとか、釣り合わない、とか…」
自分で言っててすごく辛くなる。
だから、言われた篠原はもっと辛いんだろうなって思った。
でも…
「あぁ、そのことですか?」
なんでか、あいつはケロッとしていた。
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