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雪の降る季節 12
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あのあとそのまま篠原におぶられてお化け屋敷を出て。
通りすがりの人にクスクス笑われるたびに顔に火がついたみたいに恥ずかしくなって、鼻下まで隠していたけど、顔全体を隠すようにマフラーに顔を埋めて、恥ずかしさを紛らわすように篠原の首に回した腕を更にぎゅっと強く抱き締めた。
そして、俺に気を遣ってくれたのかわざわざ人気のないとこまで来てくれて、俺はベンチの上に下ろされた。
「先輩、大丈夫?」
「…これが大丈夫に見えるか?」
「ははっ、だよね。」
笑い事じゃねーよ。
そう心の中で呟きながら、はぁ…とため息を吐く。
「もう絶対お化け屋敷なんか行かない…」
白い息を見ながらポツリと呟くと、また篠原が笑い出して。
俺の隣に腰掛けた。
「ま、俺は満足なんですけどね。ああいう先輩見れて。」
「おまえなー、」
「だって、完璧なとこしか見たことなかったからさ。」
「え?」
「勉強も出来て運動も出来て。喧嘩も強いし人脈だってあるし。料理も下手ってわけじゃないし。だから、ああいう先輩見れて俺はうれしかった。」
ニコッとこちらを見て笑う篠原。
でも、その笑顔は少し寂しそうで…
時々見せる篠原の寂しそうな笑顔を思い出して胸がズキンと痛んだ。
「それはおまえだって一緒だろ。勉強も運動も出来るじゃん。」
「んー、それとはちょっと違うんだよなー。」
「何がだよ。」
「俺は不良でたくさんの人に迷惑ばっかかけて。先輩みたいにいい人でもなんでもない。」
「そんなことねーよ。優しいし面倒見もいいし気遣いだって出来るし…おまえにだっていいとこはたくさん、」
「先輩の前だけだよ。」
「え…?」
「そういうのは先輩の前だけ。」
さっきまで笑ってた篠原の顔が一瞬で真面目な顔になった。
「俺は先輩に嫌われることが一番怖い。」
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