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哀しみの雨 07
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「えっと…」
お茶を渡したままなぜか手が離せないまま。
視線が絡みあって体が動かなくて。
徐々に体温が上がっていって、すごく熱い。
「手。」
「え??」
「離してくれないと渡せないんだけど。」
「あ、うん。そうだよね。ごめん。」
篠原にそう言われてすぐに手を離す。
すると、篠原はすぐに他の生徒に温かいお茶を渡しに行った。
本当に手伝ってくれるだけなんだな…
何か話が出来ると思ったのに…
「夕貴、早くくれよー!!さみーんだよ!!」
「あ、すみません!!」
何考えてんだよ、俺。
もう終わったことだし。
それにこの仕事は篠原と薫くんを忘れるためにやってることで…
篠原のこと考えてたら意味ないだろ…
俺は小刻みに首を左右に振って、気持ちを切り替える。
そして、残りのお茶を渡していく。
すると…
「なぁ、ハチマキ伝説って知ってる??」
そんな会話が耳に入って。
俺はその会話に耳を傾けた。
「なんだよ、ハチマキ伝説って。」
「なんか、競技中に好きな人とハチマキを交換すると永遠の愛が実るんだって。」
「っ…」
”永遠の愛”
それは夏休みに水族館で篠原と誓ったこと。
あの頃はあんなに幸せで…
何年経っても、どんなことがあっても。
水族館の恋のアクアマリンで誓った篠原との永遠の愛があれば大丈夫だと思っていたのに…。
あの頃の俺たちには想像もつかなかっただろうな…
今、こんなことになってるなんて…
「でも、競技中にハチマキ交換って出来んのか??」
「んー…例えば、一緒に競技してるときとか??」
「なるほどなー。」
ハチマキ伝説。
これでまた篠原と永遠の愛を誓えたら…なんて。
叶わない望みだけが俺の心の中に空しく残った。
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