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哀しみの雨 10
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「じゃあ、体操服が乾くまでそこにいてください。そのジャージは使っていいので。」
篠原はそのまま俺の方を振り返ることなくドアの方に向かって行く。
このままでいいんだろうか…
このままだったら本当に終わってしまうかもしれない…
そう思った俺は咄嗟に篠原の腕を掴んでいた。
篠原の手は雨で濡れたせいか、すごく冷えてて冷たかった。
「何??」
「い、いや…その、寒くない、のか??」
「えぇ。大丈夫です。」
「そっか…。」
腕を掴んだのはいいものの、何を話せばいいのかわからない。
何から話せばいいのかわからない。
俺、篠原とどう話してたんだっけ…??
今日も普通に話していたのに、なんだかすごく昔のように感じる。
「何もないなら離してください。」
「いや、えっと…」
話したいことなら山ほどある。
たくさんある。
なのに…
怖くて聞けない。
聞いたら終わってしまう気がしたから。
「会長、離してください。」
「っ…」
「会長、」
「会長って呼ぶなッ!!」
「え…??」
「会長なんて呼ぶな…!!!前みたいに…前みたいに”先輩”って呼べよ…。」
こうなることが怖かったんだ。
どんどん遠ざかっていく。
篠原がどんどん遠くなっていく。
篠原が俺の知らない人になっていく。
篠原が他人になっていく。
それがすごく怖いんだ…
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