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哀しみの雨 14
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「薫とのことのときも俺が聞いたときも。先輩は俺のことを好きだとは一言も言わなかった。」
「それは…」
「俺は言った。ちゃんと、好きだって。」
「っ…」
「でも、先輩は言ってくれなかった。」
「だから、それは、」
「本当に嫌いだと思っているのは…俺じゃなくて先輩のほうなんじゃないんですか??」
「っ…!!」
気づかれた。
見透かされた。
俺の本当の気持ち。
迷ってる気持ち。
"篠原のこと、好きかわからない"っていう気持ちを…知られてしまった。
「何も言わないってことは…そうなんですね。」
「ち、ちがっ、」
「もういいですよ。」
「え…??」
「先輩は俺に流されて好きって勘違いしただけ。最初が脅しみたいなもんでしたし。仕方ないですよ。…だから、先輩が悪いんじゃない。俺が悪いんだ。」
「何言って、」
「ありがとう、先輩。俺と付き合ってくれて…。」
「しの、はら…」
「少しの間だったけど、先輩と一緒にいた時間は本当に幸せだった。」
「っ…」
俺だって…
俺だって、すっげー幸せだった。
篠原と気持ちが通じ合って、いっぱい愛し合って、デートもキスもたくさんして…。
ケンカもしたけど、そのあとはすぐに仲直りして…。
こんなに人を好きになって、こんなにドキドキしたのは初めてだった。
特別なことなんていらない。
ただ、"一緒にいる"。
それだけですごく幸せだった。
それを篠原にちゃんと…自分の口で伝えたかった。
でも、体が強張って、震えて。
声が出ない。出せない。伝えられない…。
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