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哀しみの雨 17
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俺から離れて、立ち上がって。
ドアのほうに向かう。
「待って、篠原…。待って…!!」
俺の声が響く中、一度も振り返らずに、篠原は空き教室から出て行った。
俺に残ったのは、雨で濡れた冷たさと篠原がジャージを貸してくれた優しさの溢れる温かさ。
そして、篠原の言葉。
俺だって幸せだったのに…
本気で好きだったのに…
篠原と一緒にいれるだけで…
それだけで…
俺の目からはせっかく篠原が拭ってくれたのに…
笑ってって言ってくれたのに…
また涙がこぼれる。
『好きな人と一緒にいれる。それだけですごく幸せじゃない。』
そんなとき、理沙の言葉を思い出す。
そして、篠原と一緒に過ごした幸せな日々も。
「っ…」
でも、今さらそんなことに気づいても遅い。
今さらそんなことを思っても、自分の気持ちに気づいても…もう遅い。
なんであのときこんな大事なことに気づかなかったんだろう…
なんでこんな大事なこと忘れてたんだろう…
理沙から教えてもらったのに…
なんでちゃんと聞かなかったんだろう…
なんでもっと深く考えなかったんだろう…
離れてから気づくなんて…
あのとき気づいていたら、考えていたら…
こんなことにはならなかったのに…
考えれば考えるほど、自分がどれだけ惨めでバカで…
ドがつくほどの鈍感かを思い知らされた。
「ごめんな、篠原…。ごめん…。今さらこんな大事なことに気づいて…。あんなにたくさんの愛をくれたのに…。薫くんの言葉で気持ちが揺らいで、あんなひどいこと言わせて…。ごめん…篠原。でも、俺…やっぱりおまえじゃないとダメだ…。篠原が好き…。好きなんだ…。」
ようやく気づいた俺の本当の気持ち。
その気持ちの声だけが教室に響いて静かに消えていく。
それにすら悲しくなって。
今、俺の隣には篠原はいないんだっていうことを余計実感した。
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