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俺の隣 03
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篠原柊side
孝太先輩に頼まれて。
再び仕事を始めた。
まだまだ雨は降り続いていて。
雨に濡れたせいで寒さを訴える生徒が多い。
そのため、なかなか仕事が終わらない。
こんなこと、いつも生徒会はやってるんだよな…
そう思うと、改めて先輩ってすごいんだなって思った。
「しゅー、お茶ちょーだい。」
「あぁ。」
クラスの友達に言われて、おぼんに乗せているお茶を手渡そうとする。
が、もうおぼんの上にはお茶がなかった。
「ごめん、もうない。」
「えー。」
「すぐ淹れてくるからちょい待ってて。」
おぼんを持って、お茶を淹れに行く。
すると、もう先客がいて。
後ろに並んで待っていようとしたが、見覚えのある後ろ姿につい声をかけてしまった。
「祐介…先輩??」
声をかけると、コップを持ったまま振り返って。
やっぱりそこにいたのは祐介先輩だった。
「手伝いましょうか??」
「あ、うん。お願い。」
へにゃっと愛想のいい笑みをこぼしながら、俺にコップとポットを渡してきて。
祐介先輩も黙々と自分の仕事を続けた。
「篠原。」
急に名前を呼ばれて、驚きと緊張で手の動きが止まる。
「なんですか??」
「夕貴とはダメになったのか??」
「っ…」
直球な問いかけに逃げ出したくなった。
「ちゃんと応えろ。」
でも、いつも明るくてムードメーカーな祐介先輩がこんなにも真剣な声と眼差しを向けてきて。
逃げ出したいのに逃げられなくなった。
「…はい。」
「そっか…。」
「すみません…。」
「なんでおまえが謝るんだよ。」
またいつもの口調に戻って。
ははっと笑いながら、祐介先輩は止めていた手の動きを再開させた。
「なぁ、篠原。」
「はい。」
「今から言うことは俺の独り言だから。」
「え??」
「聞きたくないなら、耳塞いでもいいから。」
祐介先輩のあまりにも優しい声に、耳を塞ぐだなんて出来なかった。
「…夕貴はさ、かっこよくて、頭がよくて、運動が出来て…。優しくて、頼りがいがあって、みんなに信頼されて…。ホント、文句のつけようがないくらい完璧な人間だ。」
俺もそう思ってる。
今でも。
あの人は俺が付き合うにはもったいないくらいの人だって。
だけど、先輩は…
本当の先輩は…
「でも…本当に完璧な人間っているのかな??」
「え??」
「俺の知ってる夕貴はそんな完璧な人間なんかじゃない。」
「……。」
「俺の知ってる夕貴は、自信がなくて、本当は弱くて脆い。とても壊れやすい人。」
「っ…」
祐介先輩も気づいてたんだ…
ちゃんと見ていたんだ…
「それでも、周りがそう言うから。完璧だって言う肩書きを背負わせるから。だから、人一倍努力してる。あいつはそういうやつだ。」
「祐介先輩も知ってたんですね…」
「あたりまえだろ。友達なんだから。でも…おまえのほうがそれをよく知ってるだろ??」
「え??」
「一番近くで見てきたんだから。」
知ってるよ、そんなこと。
知ってる。
それでも、そんな夕貴先輩が好きなんだ。
俺が支えてあげたいんだ。
守ってあげたいんだ。
でも…
「もう俺たちは、」
「篠原くん!!」
"終わってるから"
そう言おうとしたとき、誰かに声を遮られて。
声のした方を見ると、雨で濡れた長谷川が立っていた。
「長谷川??どうした??お茶欲しい、」
「会長のことで話したいことがあるんだ。」
「え??」
「ホント、ごめんなさい。もう少し早く言ってればよかったのに…。早く言ってれば、借り物競走みたいなこと、起きなかったのに…。会長が篠原くんだけには言わないでって…。そう言われたからなかなか言えなくて…。」
息を荒くして。
まるで俺たちの関係がダメになったのが自分のせいみたいに言うから。
「わかった。わかったから。」
肩をポンと数回叩いて落ち着かせる。
すると、落ち着いたのか、息も正常に戻って。
「ホントごめんなさい…。」
ポツリと言葉をこぼした。
「もういいから。おまえのせいじゃないから。だから、ちゃんと話して。先輩が何て言ってたのか。」
聞きたかった。
先輩の本音。本当の気持ち。
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