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本心
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静かに震えているのを感じた。
握られている手がかすかに揺れていた。
「…好きだ」
もう一度、返事を請うように二都は言った。
「申し訳ないが、」
小さく息を吸い、三守は言う。
「お前のことを心から好きになることはないだろう」
二都が小さく揺れた気がした。
一分ほどの沈黙の後、二都は顔を上げた。
「わかってる。三守、ゲームってのはクリアするまでが楽しいんだぜ?」
二都はいつも通りの嫌味に、女性に騒がれる笑顔をのせた。
喉乾いた、なんか飲み物くれ、と言って二都は立ち上がり冷蔵庫へと向かっていった。
その背中に「冷たい水がある。それを飲め」と声をかけた。
今更変えられる関係じゃあない。
見かけの関係は変えることはできても、本心の関係は変えられない。
それはおそらく二都だってわかっているだろう。
気持ちなんて、とうの昔に捨てたのだし。
キッチンで水を飲む二都。
その間三守は手持無沙汰になり手遊びをする。
大学2年生あたりにもこんなことあった気がする。
そう、ぼんやり考えながら三守は掌を見つめていた。
お互いそんなに若くないし、子供がいる。
結婚してもなお周囲からは「番をつくれ」とせかされたりする。
周囲は勝手だ。羨ましい。
(お前はβだからそんなことが言えるんだ…何度思ったことか)
上司にも言われ、同期にも言われ。
数十年耐えてきた。
捨てた思いの丈に比べれば小さなものだ。
「なぁ、もう大丈夫なのか」
突然背後から二都の声が聞こえ、ビクっと体を震わせた。
「な、なにが」
「何がって、俺の体液飲み込んだだろ。風呂も短かったし、処理してないんだろう」
何かおかしいことでもあるか、と言わんばかりに二都は首をかしげた。
そんな二都に三守は短くため息をついた。
「寝たら収まる。俺は明日休みだから、ソファで寝る。お前はベッド使えよ」
そういいながら寝室へと案内する。
ベッドはシングルではなくダブル。
深い意味はない。ただ、窮屈なのが嫌いなだけ。
少し加えるならば、シングルだといろいろ都合が悪いのだ。
背の高い二都には窮屈には感じられないから好都合だろう。
心の中で何も聞いてくれるなと思いながら三守は二都の背中を押す。
ぼふん、とベッドに腰を下ろしたのを確認して部屋を出ようとした。
後ろから腕を引かれる。
そのままよろけてベッドの上に転がった。
「二都ォ…」
「好都合だな。俺も明日休みなんだ」
「あっそ。じゃあおやすみ」
そういってすぐに起き上がり、ベッドから立ち上がった。
途端に、腕を引かれ。またベッドの上に転がってしまった。
「…あのなぁ」
「一緒に寝てくれ」
すねた子供のような、理性に従う大人のような。
下唇を噛みながら言う二都に、三守は目を奪われた。
「いやだね。俺は安眠したいんだ」
なんとか声を振り絞り、今度こそしっかりと起き上がる。
あくびをしながらドアを開けると、後ろから手が伸びてドアを閉められた。
バンッと大きな音を立てたので、さすがに三守も怒った。
「あのなぁ、今何時だと思ってるんだ」
「寝てくれ。頼む。」
「そんな声で言ったって無駄。どこに番じゃないαと添い寝するΩがいるんだ」
掌をひらひらとさせながら、もう片方の手でドアを閉じている二都の手を下ろさせた。
再びドアノブと向き合い、開こうとしたその時だった。
「三守」
背中が急に暖かくなった。
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