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建前2
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「はぁ…」
やっと三守が引き下がってくれた。下半身が熱を持っている。
正直、どうして三守が平然としていられるのか、わからない。
本人の知らないうちに、フェロモンを垂れ流しているのかもしれない。
三守の為にも、それだけは何とかして自覚させねばならない。
「とりあえず…抜くか。」
狭いトイレで独り言をつぶやく。
二都は下着から自身を取り出し、緩く握った。
落ち着かせるだけだと自分に言い聞かせ、欲を吐き出すことだけを考える。熱に浮かされる体の反面、頭は冷静であった。
三守の唐突な申し出には、動揺した。何の考えがあってあんなこと言い出したのかは不明だが、いきなりの掌返しにしては些かノリづらい。
目の前に餌をぶら下げられたようなものだが、すぐに食いつくのも面白くなかろう。
自分の中で無理やり結論づけると、二都は自身を慰める手を速めた。
「ふっ、くッ」
小さく喘いで、欲を吐き出す。
最中に三守の事を考えるのにも慣れてきた。
トイレットペーパーで手の中の精液をふき取り、綺麗にする。
ドアノブを肘でうまく開き、手を洗った。
そのまま与えられた寝室にいくか、リビングに三守を見に行くか、しばし迷った。
一言、おやすみとだけでもかわしたい。
そう思った二都はリビングのドアを開いた。
ドアを開けば、ソファに腰掛ける三守の背中が見えた。正確には首から上だが。
おやすみ、そう声をかけようとした。
しかし、三守の掌に出されたものが目に留まり、声が出なくなった。
「おい!!!自殺でもするつもりか!!!」
「!?二都!?」
しまった、と思った時には既に体が動いてしまっていた。三守の手首をつかみ、上にひねりあげる。掌に出されていた大量の錠剤が床に散らばった。目を白黒させていた三守はすぐに怒気を瞳に宿した。何をするんだ、何か言い訳があるなら言ってみろ、と瞳で訴えかけてくる。
「何をしようとしていた。」
腕をつかんだまま、問う。
「別に。お前に言う筋合いはない」
「なぜだ」
「お前と俺の間には、『言わなければならない』という契約関係がないからだ」
「屁理屈だ。床の錠剤はなんだ。眠れないならはっきりといえばいいだろう。出ていけ、と」
「…違う。そんなんじゃあないんだよ…」
三守は説明するのもめんどくさい、といった風で、額に手をつきため息を吐いた。
二都は三守のそんな態度に少しイラつきを感じた。自分に秘密にしていることがある、と。
三守は緩くなった二都の拘束から腕を外し、床に散らばった錠剤を拾い始めた。
掌に出していた分と、瓶の中身もぶちまけてしまっていた。三守は小さく、あーあ、とつぶやきながら拾っていた。
「睡眠薬か。いつからだ」
「どうでもいいだろ。…それと、睡眠薬じゃあない。ちゃんと処方されたものだ」
「一回につき20錠以上が自殺じゃない?ならなんだというんだ」
「睡眠薬自殺には大量の薬がいる。それこそ。90錠以上ってレベルだ。そもそも自殺する理由がない」
「ッ…。どうしても教えてくれないのか」
「それ以上粘るようなら、出て行ってもらう。今後一切、この部屋には入れてやらない」
三守の声を最後に、部屋に沈黙が続いた。
二都は、絞り出した声で、小さく、おやすみ、とだけつぶやいてドアの向こう側へとでていった。
床の錠剤を拾いながら、三守は下唇を噛んだ。バレなかった。よかった。何も、なかった。
こんな悔しい思い、二度とごめんだ。掴んだ錠剤にヒビが入った。いつの間にか、爪を立ててしまっていたようだ。貴重な薬なのに。
段々と、薬を拾うペースが遅くなる。
ポタ、と水滴が床に落ちた。泣いているのだと、自覚するのにしばらく時間がかかった。
自殺?ああ、したかったな。許されるなら、していた。
でも、俺は、貴重なΩだから。
三守は静かに泣いた。
瞬きをするたびに、床に増えていく水滴を見つめていた。
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