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放課後の図書室
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ぎゅっとつかまれた手のひらは彼のYシャツの胸に押し当てられている
「え?えぇ?!」
な...なん....なに?
急な展開ついていけない僕はドギマギしていた
「僕のここ、ドキドキしてない?」
きゅっとしたり、ぎゅーっとしたり、少しずつ握り方を変えながら彼は自分の胸に僕の手を押し当てる
「ねえ、感じない?」
か...感じるっていうか
なんて言えばいいの??
感じてないわけではなかった...なんかドキドキっていうか、ドキドキを通りこしてドコドコと体の中に太鼓でもあるみたい
でもそれって...それって...
「きっ聞こえるけど!」
「けど?」
心臓の音がうるさい
頭が沸騰するみたいだ
このままだと顔から火が出る!!
確実に出る!!!
「聞こえるけど!!僕がドキドキしすぎてどっちのか分かんない!!」
もう頭の中ぐちゃぐちゃでなんだか泣き出してしまいそう
爆発するってこういうことだと思った
「歩くん...僕」
ああ!もうっ!!
君がなにを言ってるのか頭に入ってこない!!
柏木君が何かを言いかけるのを涙目になりながら意識を手の平に集中させていた
「僕もね、君といるとドキドキするんだ」
???
今、なんて言った??
「僕は君が好きだと思う、だから君の好きと僕の好きが一緒だとうれしいんだけどな」
......。
頭が真っ白になって何も答えられなかった
今なんて言った?
呆けたような顔で柏木君を見つめる僕に向って彼は言った
「ねえ、キスしていい??」
え?
え?
キス?
キスって...
「だめ?」
だめ?!
だめっていうかいいか悪いかもわからない
キスって男同士でしてもいいのかな...
どうしよう
どうしよう
「嫌だったらすぐ止めるから。」
「あっあのっ...」
答えようとし瞬間、唇に何かが触れた
「!!!」
一瞬、時が止まった気がした
「え?えっと...」
彼との顔の距離がめちゃくちゃ近い
「大丈夫?」
僕、今キスしたの?
???
「歩くん?」
心配そうに僕の顔をのぞく彼の言葉でようやく我に返る
「や、なんかびっくりしちゃって...」
呆けたように答えるとふふっと笑った
「嫌じゃなかった?」
「え...えっと、うん」
嫌かどうかなんて考える暇もなかっただけだけど
「そっか...じゃあもう一回してもいい?」
「え?!」
「いい?」
さっきの一回で事態がだんだん飲み込めていく
は...恥ずかしい
恥ずかしいけど...
僕は小さく頷いた
彼が今度はゆっくり顔を近づける
彼の大きな黒目に僕が映る
その目に吸い込まれてしまいそう
「んっ...」
今度はさっきよりも長く
といっても時間でいうと数秒なんだろうけど
体感的にはうんと長く感じた
彼の髪のにおいがする
体中の神経がぞわぞわと泡立っていくのを感じる
キスしちゃってる
僕があの柏木くんと...
そんなことをグルグル考えていたらだんだん息が苦しくなってきた
こ...これってどこで息するのかな?
でも柏木くん離してくれないし
「んっんん...!!!!!」
く...苦しい!!
苦しくて思わず逃れようとする
...なのに彼は僕の背中に手を回してガッチリと力を込めた
苦しい!!!
「んーーーーっ!!」
グイっ!!
やっとの思いで彼の体を引きはがす
「はぁーーーーーーーー!!」
息が止まるかと思った
やっとの思いで唇を離すとものすごい勢いで息を吸い込む
「あはは!ごめんごめん」
「もー、苦しいよぉ」
はぁっはぁっと息を取り込む僕を彼はいたずらな顔をして笑った
「大丈夫?」
僕の背中を擦りながら息が整うのを待つ
「う、うん!もう大丈夫...」
「ごめんね?無理させて...」
落ち着きかけた僕に彼が言った
彼の顔を見上げるとついさっきまでびっくりすることしてきたのに
まるで泣きそうな顔をしていた
「だ...大丈夫だけど、なんてゆーか...その、びっくりしちゃったけど」
ーーー嫌じゃなかった気がする
キスしちゃったんだよね
僕...柏木君と...
そう改めて冷静になると急に恥ずかしさが襲ってくる
顔見れないよぉ...
「歩くん?」
「あっ、うん...」
目が合うと途端に顔が熱くなる
あぁ...この目だ
僕は彼の目に見つめられると途端に何も考えられない
「大丈夫...なんだけど...その」
「恥ずかしいの?」
やっぱり柏木君には何もかもお見通しだ
コクンと頷いて上目遣いに彼を見上げる
なんだか余計恥ずかしい
すると彼は僕をぎゅっと抱きしめて笑った
「歩君はかわいいなぁ」
「ちょっ...」
うわぁ
抱きしめられちゃった
柏木君の体が熱い
遠くで下校のチャイムが聞こえた
彼を照らしていたはずの夕日はいつの間にか影ってしまっていた
「そろそろ帰ろっか」
「う、うん」
体に熱を帯びたまま、僕たちは図書室を後にした
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