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二人の距離
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「なんか難しい...かも」
そう思いながらゆっくりとページをめくっていく
僕はリビングで、図書室で借りてきた本を読んでいた
放課後の時間だけでは読み切れるはずもなく、でもせっかくなら、由希也くんのいない間に読みきって、いざ遊ぶ時に、読み終わったことを伝えたかった
母が台所で夕食を作り上げるまで、テレビもつけずに読んでいた
「えらい熱心によんでるわね?」
母が声をかけるまで、近づいてきたことすら分らなかった
「なによんでるの?」
そう言って僕の本をのぞく
「あ...これなんだけど」
そう言って僕はタイトルが見えるように向けた
「あぁ!人間失格ね!めずらしいわね、あんたがそういうの読むなんて」
「読んだことあるの?」
母に聞くと、当たり前といった風に言った
「昔から有名だもの! ほかにもあるじゃない?えっと、走れメロスとか...あとはなんだっけ?吾輩は猫である?」
「猫は違うよ!」
母の間違えた記憶に突っ込みを入れながら聞いた
「走れメロスは授業でやったからわかるんだけど...なんかこれって難しくて..内容覚えてる?」
そういうと僕の手から本を取り上げてパラパラとめくる
「くわしくは...覚えてないけど...なんか人生に疲れた男の話、、だったかな?心中未遂とか...なんかそんなんだったかしらね?」
とってもあいまいに答える
「適当なんだけど....」
「だって!ママはあんたと違って本は得意じゃないもの!読んだことあるってだけよ」
そういって取り上げた本を僕に突き返した
「あ...そういえば」
と何か思いだしたかのように言った
「なんか、それ、太宰治の遺書なんじゃないかっていわれてたわよね」
「そ....そうなの?」
「あれ...ちがったかな?忘れちゃった(笑) まだ、あんたには早すぎるんじゃない?」
そう言いながら台所に戻っていく
何か作っている途中だったみたいで、台所から何か炒めるような音がした
ジュウジュウと大きな音がする中、母の声がした
「いつもみたいなしょうもないゲームみたいな本よりそっちのほうがいいんじゃない?頭良くなるかも!!」
「うるさいな!」
僕はムッとして言い返した
だから嫌なんだよ
お母さんは僕のすることにいちいちチャチャいれてくる
悔しいから絶対読んでやる
よく分んなくても意味は由希也くんに聞けばいいや
僕はそう思って本を握る手に力をこめた
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