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由希也の場合
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「いい加減にしろ!」
「やめてよ!大きな声ださないで!!」
ーーーまただ...
毎晩毎晩、夜中にどうしてこうも喧嘩する労力が残っているんだろう
本人たちは気づいていないのかもしれないけれど夜の間ずっと聞かされる身にもなってほし
い
僕の両親はこのところすこぶる仲が悪い
海外出張の多い父親
看護師としてフルタイムで働く母親
どうしたって忙しい夫婦はいつの間にかすれ違って顔を合わせれば喧嘩ばかり
それでもまだ僕が小学生の間はまだ何とかマシだったと記憶するが僕が中学に上がってある程度親の手が離れると今まで我慢してたのか、急にいがみ出した
中学1年生という時期もあと残り数か月
中学2年になると人によっては受験だなんだっていろいろ始めるのに
親がこれじゃ相談するもあったもんじゃない
「うるさいな...」
僕は耳を塞いでベットに潜りこむ
早く明日になれ
はやく朝になって明日になれ
だからって明日がいい日になるわけではないけれど
明日になり夜になりまたコレの繰り返しなんだろうけど、...
*****
「澤田君これで五回目よ?そろそろ三者面談の日程を出してもらわないと」
「...はい、すいません」
放課後の教室で、担任の花田先生はため息をつきながら続ける
「私のほうからお家の方に連絡しましょうか?」
「や...大丈夫です!!」
僕は慌てて、断る
そんなことされたらまたうちの中がごちゃごちゃしてしまう
これ以上刺激したくない
「澤田君だけなんだから、来週までにお願いね」
きつめに念を押して花田先生は行ってしまった
花田先生はおっとりしていて美人でみんなに人気の先生だ
でも僕は少し苦手だ
だって、先生の後ろ姿に僕へのイライラが見え隠れする
普段からちょっと僕のことを扱いづらいと思っているのを感じる
だって先生は人が何か迷ったり悩んだりしているときにズカズカと無神経に入ってくるからよけい近づきたくなくなるのだ
こんな風に思っている生徒もあまりいないみたいだけど
先生...僕んち、それどころじゃないんです。
僕は独り言を心の中でつぶやいた
「はぁ...」
くしゃくしゃになった三者面談のプリントを見ながらため息をつく
今日こそ言わないと...
だけど何時に帰ってくるかわからないし
今帰ったって誰もいないんだから
二人のどちらかが帰って来るまで待って話して、そのうちどっちかが帰ってきて、えーと...それでそれでそれで...
考えるだけで憂鬱になる
このまま家に帰るの嫌だなー
どこかで時間つぶそうか...
でもどこで?
友達は塾だし、空いててもそんなに遅くなれないし....
そう考えていたとき思いついた
「そうだ!図書室」
あそこなら静かだし、お金もかからないし、時間もゆっくりつぶせるんじゃないかな
僕は図書室に行ってみることにした
図書室の扉を開けてみると案の定2、3人しかいない
扉を開ける音で、一瞬僕のほうを見たがすぐに興味を自分が読んでいる本に戻していった
あんまり図書室なんて利用しないんだな
でもここなら誰のことも気にしないでいられる
そう思いながら、空いている席に荷物を置いた
なに読もうかな...
本棚をいざ目の前にすると何がいいのかわからない
うろうろしながら手当たり次第に本を手に取ってタイトルを心の中で読み上げる
「あ、これ...」
昔読んだことがあったような本のタイトルを見つけて手に取った
パラパラとめくり手始めにこれにしよう!と決めていそいそと席に戻った
読み始めると、ところどころ覚えていたりいなかったりで思いのほか真剣に入り込むことができた
弱気な主人公が行く先々の困難に立ち向かっていつの間にか強くなる
ありきたりな内容だったが、それでもストーリーの中の主人公に苦難があればなんだか胸が苦しくなったし、明るいシーンになれば自然と口元がほころぶのだった
夢中で読み進めていくうちふと気づくと図書室には自分一人だけになっていた
「あれ...いま何時だろう?」
外もいつの間にか暗くなり始めていた
夢中になりすぎちゃったな...帰らないと...
そう思っていた時だった
ガラッーーー!!!
勢いよく扉が開いた
「うわっ!! びっくりしたー!」
僕の存在に驚いて声を上げた
その声で僕も驚いて固まってしまった
入ってき人は
...確か...黒田先生だ!
二年生の先生だからあんまりかかわりないけど、体が大きくて、声が大きいことで有名な先生だった
「おい!もうとっくに下校時刻とっくにすぎてるぞ!?」
ちょっと強めに言われて僕は少し怖がってしまった
「す...すいません!今帰ります!」
慌てて鞄を掴み先生に頭をさげた
するとさっきまで怒っているみたいだった先生は言った
「やー...びっくりした、お化けかと思った...」
「へ?」
僕は思わず顔を上げる
「この時間、もう誰もいないから...お前がいたからびっくりしたよ!俺、最後全部鍵締めて回るんだから...ビビらすなよ!」
そういって大きな声で笑った
「は...はぁ」
僕のことお化けだとおもったの?
先生でもそんなこというんだ...
教師というものの意外な姿に僕は驚いた
「お前...ばかにしてるだろう!?」
僕の顔見てちょっと恥ずかしそうに言った
「え....や...別に」
「ほらほらっ!締めるぞ!帰れ帰れ!」
恥ずかしさを誤魔化すように先生は図書室から僕を追い出す
先生に挨拶して図書室を後にしようとしたときふいに呼び止められた
「おい!これ...お前のか?」
先生の手に何か握られていた
よく見ると、ぐしゃぐしゃになった三者面談のプリントだった
「あ...すいません」
慌ててプリントをかばんに押し込む
「お前何組だ?」
「あ...1年3組です。」
先生は少し考えてから
「花田先生のとこだな...」といった
三者面談のプリントをみて一気に現実に引き戻される
早く帰ろう...僕は思い気持ちを引きずりながら帰った
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