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由紀也の場合
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それから先生とよく話すようになっていった
家のこともそれ以外のことも
僕は唯一、本音を話せる人として先生を信頼していった
先生は、明るくて、優しくて、そしていつも僕の話を聞いてくれた
話を聞いてくれるだけで、心が軽くなって、
声をかけられるたびにうれしくなった
相変わらず、両親はケンカが絶えなかったけど、先生が話を聞いてくれるから耐えられる
誰も僕を気にかけてくれなかったけど、先生だけは違った
違って見えた
僕は先生にあこがれの気持ちが芽生えていた
もっともっと話を聞いてほしくて
もっともっと先生の話が聞きたかった
そんなある日、僕は担任の花田先生に呼び出された
「澤田くん、ちょっといい?」
相変わらず三者面談の予定は出せないままだし、いい加減おこられるんだろうな...
そんな風に思いながら、空き教室に連れていかれた
花田先生は二人っきりの教室で何か言いたそうに僕の顔を見る
そして、言いづらそうに話しだした
「あのね...言いづらいんだけど...」
そう言いながら僕と目をあわせないように続ける
「お家、今、大変なんでしょう?」
「え...?」
「だから三者面談の予定出せなかったのね?ごめんね?先生気づかなかったから」
なんで知っているんだろう
友達にだっていってないのに...
なんで
なんで
僕がうろたえているとその顔をみて先生は笑顔でいった
「もう少し、予定は待つからね?何かあったら言ってね?」
僕はなんで先生が知っているのか分らず空返事をする
「それにしても、わざわざ黒田先生に言わなくても、話してくれたらよかったのに..これからは私が話を聞くからね?」
そう言って僕の肩に手をおいた
あぁ
そっか
僕は妙に納得した
なんだ
黒田先生が言ったんだ
黒田先生にしか言ってないんだもん...先生しかいう人いないよね
なんだ
誰にも言わないって言ったのに.....
急に心が重くなった
心にまたもやがかかったみたいだった
「澤田くん」
声をかけられてはっとする
「あ...ありがとうございます」
僕はそのままその教室を後にした
教室に戻ると友達が話しかけてきた
「花田先生どした?」
「うん...ちょっと...」
「なぁ、花田先生の話聞いた?」
そう言って友達はニヤニヤしながら僕に耳打ちする
「花田先生て2年の黒田先生と結婚するんだって!」
「え!!嘘!?」
僕は自分でも驚くほど大きな声で言っていた
「バカ!声でかいよ!」
「ご...ごめん」
そう言いながら僕は友達に顔を近づけて話の詳細を聞く
これはあくまで噂だけど
黒田先生と花田先生は結婚するらしい
花田先生は今年、それで学校をやめるらしい
いわゆる寿退社ってやつ
一応内緒だけど、
噂はもう学校全体に回っていること
なんだ
なるほどね
だからか
だから知ってたんだ
急に気分がしらける
裏切られたみたいなそんな気分だった
******
放課後の図書室でいつものように一人で過ごしながら時間をつぶす
頭に入らないけどとりあえず文字を追って、本のページをめくる
時間がたつのが遅い
ふと窓を見るとゆっくり暗くなり始めていた
すると遠くのほうからまたガチャガチャと鍵の音がする
ガラリと扉が開いていつものように黒田先生が入ってきた
「おぉ!澤田...相変わらずだな」
何も知らずに笑って僕に近づいてくる
「今日は何読んでいるんだ?」
僕の広げた本に手を触れようとした
パシッ!
思わずその手を払う
「...澤田?」
いつもと違う僕に先生は少し驚いたよう聞いてくる
「どうした...?」
「....なんで花田先生に言ったの?」
「え...?」
「言わないって言ったのに...」
言いかけて先生を見上げると先生はしまった!とばかりに顔を覆った
「や...もしかして....花田先生に何か言われたのか?」
この反応...やっぱり先生だ
「信じてたのに...」
なんだか泣きそうになってきた
バカみたい
信じて話して知らない間にほかの人に話されてて
ホントバカみたい
やっぱり、先生なんて信じるんじゃなかった
バカみたい
「先生なんてもう信じない!もういいです!」
そう言って図書室を出ようとした
すると先生は僕の腕を掴んで引き留める
「まてって!」
さすがは大人の力で掴まれてびくともしない
「離してください!」
そう言いかける僕と同時くらいに先生は
「すまん!!」
それはあまりにも大きな声で耳が痛くなるくらいだった
びっくりして固まる僕に先生は頭を下げてあやまる
「本当にすまなかった!」
そう言ってなおも頭を下げてあやまのをやめない
先生なのにこんな風に謝ることに驚いた
こんな風に生徒に謝ってくれるなんて思わなかった
あっけにとられていると先生は頭を上げて僕を見る
「ほんとにごめんな....」
あまりにも謝られるとなにも言えなくなってしまう
「べつにもういいです...」
僕は先生の目を見ない
そんなこと言っても仕方ないけれどそれでも何か言ってやらないと気が済まない
「もう、先生には話さない」
それだけ言って帰ろうとする僕を先生が引き留める
「ちょっと来い!」
「えっ!?えっ...」
ぐいぐい引っ張って僕をどこかへつれて行く
暗くなった廊下をがっしりと腕を掴まれて引っ張られていた
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